海野十三
海野十三 · Japanese
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海野十三 · Japanese
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Original (Japanese)
1 魔都上海に、夏が来た。 だが、金博士は、汗もかかないで、しきりに大きな手押式の起電機を廻している。室内の寒暖計は、今ちょうど十三度を指している。ばかに涼しい室である。それも道理、金博士のこの実験室は、上海の地下二百メートルのところにあり、あの小うるさい宇宙線も、完全に遮断されてあるのであった。 天井裏のブザーが、奇声をたてて鳴った。 「ほい、また来客か。こう邪魔をされては、研究も何も出来やせん」 博士は、例の無精髭を、兎の尻尾のようにうごかして、天井裏を睨みつけた。 「博士、御来客です。醤買石閣下の密使だそうです。はい、只今、X線で、身体をしらべてみましたが、何も兇器は所持して居りません。どういたしますか」 姿は見えないが、声だけの秘書が、用事を取次いだ。 「何か土産を持っている様子か」 「なんだか、大きな風呂敷包を、背負って居ります。どうやら羊か何からしく、X線をかけると、長い脊髄骨が見えました」 「羊の肉は、あまり感心しないが、糧食難の折柄じゃ、贅沢もいえまい」 「では、通しますか」 「とにかく、こっちへ通してよろしい。土産物を見た上で、話を聞くか、追払うか、どっちかに決めよう
海野十三
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