小川未明
小川未明 · Japanese
No translation yet. Request one to move it up the queue.
小川未明 · Japanese
First paragraph preview
Original (Japanese)
遠く、いなかから、出ていらした、おじいさんがめずらしいので、勇吉は、そのそばをはなれませんでした。おじいさんの着物には、北の国の生活が、しみこんでいるように感じられました。それは畑の枯れ草をぬくもらし、また町へつづく、さびしい道を照らした、太陽のにおいであると思うと、かぎりなくなつかしかったのです。 「こちらは、いつも、こんなにいいお天気なのか。」と、おじいさんは、聞かれました。 「はい、このごろは、毎日こんなです。」と、おかあさんが、答えました。 「あたたかなところで、くらす人は、うらやましい。」 おじいさんは、庭のかなたへ、はてしなくひろがる空を見ました。風のない、おだやかな日で、空がむらさきばんでいました。 「おかあさん、さっき、金魚売りがきた。」 「そうかい、戦争中は、金魚売りもこなかったね。」 「故郷は、まだこんなわけにはいかない。」と、おじいさんは、なにか考えていられました。 「もうすこし、近ければ、ときどきいらっしゃれるんですが。」 「こちらへくると、もう、帰りたくなくなる。」と、おじいさんは笑われました。 勇吉は、おじいさんの顔を見て、 「おじいさん、いなかと、こっちと
小川未明
Translation status
WaitingLog in to request a translation.
Frequently asked questions
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
Free to read
Start reading immediately — no signup required. Create a free account for more books and features.