Chapter 1 of 3

町はずれに、大きなえのきの木がありました。その下に、小さな床屋がありました。円顔の目のくるりとした男が、白い上着を被て、ただ一人控えていましたが、めったに客の入っているのを見ませんでした。なんとなく、みすぼらしく、それに狭苦しい感じがしたからでしょう。

勇ちゃんも、年ちゃんも、学校へゆくときはその前を通りました。

「怖い顔をした、おじさんだね。」と、小さい声で勇ちゃんがいいました。

「僕のゆく床屋はきれいだよ、鏡が五つもあるよ、ここは、一つしかないね。」と、年ちゃんが、いいました。

「僕、こんなとこは、いくら安くてもやだな。」

「もっと、きれいでなければね。」

「そうさ。」

二人は、学校から帰ると、原っぱでボールを投げて遊んでいました。

「いいかい、カーブを出すよ。」

「オーライ。」

そのうちに、ボールはころがって往来のそばの深いみぞの中に落ちました。

「困ったね。」と、二人が下を見ていっているところへ、

「どれ、拾えないかな。」といって、顔を出したのは、思いがけない白い上着を被た床屋の主人でした。

「待っていな、いま取ってやるから。」と、主人は、自分の家へ走っていって長いさおを持ってきました。そして、ボールをこちらへ寄せて取ってくれました。

「ありがとう。」と、二人は心からお礼をいいました。

主人の姿が見えなくなると

「いいおじさんだね。」と、二人は、顔を見合って、にっこりしました。

Chapter 1 of 3