小川未明
小川未明 · Japanese
No translation yet. Request one to move it up the queue.
小川未明 · Japanese
First paragraph preview
Original (Japanese)
ある日のこと、さち子は、町へ使いにまいりました。そして、用をすまして、帰りがけに、ふと草花屋の前を通りかけて、思わず立ち止まりました。 ガラス戸の内をのぞきますと、赤い花や、青い花や、白い花が、みごとに、いまを盛りと咲き乱れていたからです。 まだ、春にもならなかったので、外には、寒い風が、しきりに吹いていました。しかし草花屋の温室には、スチームが通っているので、ちょうど五、六月ごろの雨のかかったように、しずくがぽたりぽたりとガラス戸の面を伝わって、滴っているのでした。 これらの花は、いずれも、もとは熱帯地方からきたので、こんな寒いときには、咲かないものばかりでした。太陽が、もっと近く、そして、風がやわらかになり、暖かくならなければ、圃には咲かないのでした。 さち子は、扉を開けて、その草花屋の内へはいりました。すると、ヒヤシンスや、リリーや、アネモネや、その他のいろいろな草花から発する香気がとけ合って、どんなにいい香水の匂いもそれにはおよばないほどの薫りが、急に、顔や体を襲ったのでした。 彼女は、しばらく、ぼうっとして、酔い心地になってしまいました。なにか、自分の好きな花を買って帰ろうと
小川未明
Translation status
WaitingLog in to request a translation.
Frequently asked questions
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
Free to read
Start reading immediately — no signup required. Create a free account for more books and features.