北村兼子
北村兼子 · Japanese
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北村兼子 · Japanese
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Original (Japanese)
新秋の氣もちいゝ風が簾を透して吹く、それが呼吸氣管に吸ひ込まれて、酸素が血になり、動脈が調子よく搏つ………その氣が味はへない。 澄んだ空の月を寢ながら眺める、人いきれから逃れた郊外の樂みは、こゝに止めを刺す……それが觀られない。 空氣も流通しないほど、ピシヤリと障子を建てゝ蒸されてゐる、息がつまる。 それは猫のため、兒猫のため、五寸にたらぬ小さな猫一匹で、五尺に近い體を持てあます。苦しい。 また來た、かあゆい聲。 もう勘忍してくれ、お前のために苦しみぬいてゐる、その鳴き聲は殺人的だ。 寢轉んで讀書してゐる枕頭にお行儀よくおちんをしてゐる、叱つても逃げない、庭へつまみ出す、また這入つてくる、汚物をたれ流す、下女が怒る。 小さな飼主のない猫、まだ純眞な態度で人を怖れないのみか、人なつかしい調子で鳴き寄つてくる。 獰惡な野良猫、お隣りの鷄を全滅させた惡いヤツ、家の鯛をさらつた盜癖のある畜生、それが産んだ兒は、このやさしい美しいニヤン公である。 親に似ない兒だが、成長したらアノ通りの獰惡振りを相續するに違ひない、環境の罪だいつそ家に飼つてやらうかと思つて、また躊躇した。 以前猫を飼つて、不潔な
北村兼子
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