坂口安吾
坂口安吾 · Japanese
No translation yet. Request one to move it up the queue.
坂口安吾 · Japanese
First paragraph preview
Original (Japanese)
遺恨 坂口安吾 梅木先生は六十円のオツリをつかんで中華料理店をとび出した。支那ソバを二つ食ったのである。うまかったような気がする。然し、味覚の問題ではない。先生は自殺したくなっていた。インフレ時代に物を食うということが、こんなミジメなものだとは。お金をだしながら乞食の自覚を与えられたのであった。 梅木先生は裏口営業とはどんなものか知らなかった。終戦以来、料理店の門をくゞるのは、はじめてゞあった。 裏口営業などゝ云われているが、表に、只今営業中、という札が下っている。すると、裏口とはどういうことだろう? いっぺん裏口をくゞったら、どんなに爽快だろうか。せめて、只今営業中、の表口でいゝからくゞってみたいものだと考えていたのである。 この日、梅木先生は一方ならぬ決心をしていた。どうしても、食う。あの只今営業中、の札のかゝった戸口をくゞるのだ。 悲愴な覚悟というものは、たとえば味覚に端を発していながらも、結局は特攻隊と同じような、支離滅裂な亢奮と絶望に帰一するものらしい。 戸口をくゞる時から、梅木先生の覚悟はたゞ事ではなかった。逆上、それから、混乱だ。 けれども、店内は、意外や、あたりまえの店
坂口安吾
Translation status
WaitingLog in to request a translation.
Frequently asked questions
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
Free to read
Start reading immediately — no signup required. Create a free account for more books and features.