チェーホフアントン
チェーホフアントン · Japanese
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チェーホフアントン · Japanese
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Original (Japanese)
『先生』と綽名のついた老人のセミョーンと、誰も名を知らない若い韃靼人が、川岸の焚火の傍に坐っていた。残る三人の渡船夫は小屋のなかにいる。セミョーンは六十ほどの老爺で、痩せて歯はもう一本もないが、肩幅が広くて一見まだ矍鑠としている。彼は酔っていた。もう夙から寝たくてならないのだが、ポケットには酒瓶があるし、小屋の若者達にヴォトカをねだられるのも厭だった。韃靼人は病気で元気がなかった。襤褸にくるまりながら、シンビールスク県〔(県が廃止されるまでヴォルガ中流の右岸に臨んでいた一県。地味肥沃で、農産が豊かである。中心市はシンビールスク(現在のウリヤノフスク))〕の素晴らしさや、郷里に残してある美人で利口な女房のことを話していた。年は二十五を越してはいまいが、いま焚火の明りで見ると、病気窶れの顔はいたましく蒼ざめて、少年のように見えた。 「そりゃ、ここは極楽じゃないさ」と『先生』が言った、「見たって分らあね。水、裸かの岸、あたり一面の粘土、それっきりだ。……復活祭ももうとっくに済んだのに、河には氷が浮いているし、今朝なんかも雪がちらついていた。」 「成っちゃいねえ、まるで成っちゃいねえ。」韃靼人
チェーホフアントン
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