新美南吉
新美南吉 · Japanese
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新美南吉 · Japanese
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Original (Japanese)
良寛といふ名前の坊さんが、今から百五十年ぐらゐ前に住んでゐた。この本にはその坊さんのことが書いてある。 君達の中には、西郷隆盛や、乃木大将や、ナポレオンや、ジンギスカンなどの本を読んだ者があるだらう。そしてさういふ子は、本といふものは、人間の中で偉かつた人、何か大きなてがらを残した人に就いて、書かれるものだといふことを、知つてゐるに違ひない。さうだ。その通りだ。 ところで、この本に書かれてある良寛さんは、偉かつたらうか。 なる程、大人達は良寛さんを偉かつたといつてゐる。そして良寛さんのいろいろな話が、今でも良寛さんの住んでゐた新潟県出雲崎のあたりには残つてゐる。何でもその辺の人に「越後で偉かつた人は誰ですか。」と訊ねると「それは上杉謙信と良寛さんです。」と答へるさうである。 だが君達は、この本を読んでゆくうちに、不思議な気がするだらう。こんな坊さんの何処が偉いのかと思ふだらう。こんな乞食のやうな坊さんが偉いのなら、そのへんの乞食やルンペンは、みんな偉いぢやないかといふ者があるかも知れない。 さういつて、途中でこの本をおつぽり出してしまつてはいけない。もう少し我慢して先へ読んでいき給へ。
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