宮沢賢治
宮沢賢治 · Japanese
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宮沢賢治 · Japanese
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Original (Japanese)
黒ぶだう 宮沢賢治 仔牛が厭きて頭をぶらぶら振ってゐましたら向ふの丘の上を通りかかった赤狐が風のやうに走って来ました。 「おい、散歩に出ようぢゃないか。僕がこの柵を持ちあげてゐるから早くくぐっておしまひ。」 仔牛は云はれた通りまづ前肢を折って生え出したばかりの角を大事にくぐしそれから後肢をちゞめて首尾よく柵を抜けました。二人は林の方へ行きました。 狐が青ぞらを見ては何べんもタンと舌を鳴らしました。 そして二人は樺林の中のベチュラ公爵の別荘の前を通りました。 ところが別荘の中はしいんとして煙突からはいつものコルク抜きのやうな煙も出ず鉄の垣が行儀よくみちに影法師を落してゐるだけで中には誰も居ないやうでした。 そこで狐がタン、タンと二つ舌を鳴らしてしばらく立ちどまってから云ひました。 「おい、ちょっとはひって見ようぢゃないか。大丈夫なやうだから。」 犢はこはさうに建物を見ながら云ひました。 「あすこの窓に誰かゐるぢゃないの。」 「どれ、何だい、びくびくするない。あれは公爵のセロだよ。だまってついておいで。」 「こはいなあ、僕は。」 「いゝったら、おまへはぐづだねえ。」 赤狐はさっさと中へ入り
宮沢賢治
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