小林多喜二
小林多喜二 · Japanese
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小林多喜二 · Japanese
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Original (Japanese)
お惠には、それはさう仲々慣れきることの出來ない事だつた。何度も――何度やつてきても、お惠は初めてのやうに驚かされたし、ビク/\したし、周章てた。そして、又その度に夫の龍吉に云はれもした。然し女には、それはどうしても強過ぎる打撃だつた。 ――組合の人達が集つて、議題を論議し合つてゐるとき、お惠がお茶を持つて階段を上つて行くと、夫の聲で、 「嬶の意識の訓練となると、手こずるつて……。」さう云つてゐるのを一度ならず聞いた。 「××は臺所から――これは動かせない公式だからなあ。小川さん、甘い、甘い。」 「實際、俺の嬶シヤポだ。」 「ワイフとの理論鬪爭になると、負けるんだなあ。」と、そして、皆にひやかされた。 夫は聲を出して、自分で自分の身體を抱えこむやうに、恐縮した。 朝、龍吉が齒を磨いてゐた。側で、お惠が臺所の流しに置いてある洗面器にお湯を入れてやつてゐた。 「ローザつて知つてるか。」夫が楊子で、口をモグ/\させながら、フト思ひ出して訊いた。 「ローザア?」 「ローザさ。」 「レーニンなら知つてるけど……。」 龍吉はひくゝ「お前は馬鹿だ。」と云つた。 お惠はさういふ事をちつとも知らうと思ひ、
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