佐々木邦
佐々木邦 · Japanese
No translation yet. Request one to move it up the queue.
佐々木邦 · Japanese
First paragraph preview
Original (Japanese)
入社してから一週間目ぐらいだったろう。少くとも同僚の顔が皆一様に見えて、誰が誰だか分らない頃だった。僕は退出後駅へ向う途中、大通から横道へ折れ込んだ。或は近道かと探検の積りだった。しかし然ういうところは大抵遠い。矢っ張り急がば廻れだと思った時、ふと気がついた。直ぐ前を同僚の一人が若い女性と手を引くようにして歩いて行く。謂うところのアベックだ。 「早業だな。油断も隙もならない。今の今まで同じ部屋で仕事をしていたのに」 と僕は感心した。兵は神速を貴ぶ。しかし御両人、悉皆安心して、話し/\歩くから、此方は困る。ツカ/\と追い越すのは当てつけるようで粋が利かない。これは引き返す方が宜いと考えて、その身構えをしたが、折から曲り角へ差しかゝって、同僚が振り向いたから、顔と顔が合ってしまった。早これまでなりと度胸を据えて、僕は会釈をしながら通り過ぎようとした。 「もし/\、宮崎さん」 と同僚が呼び止めた。名を覚えていてくれたのだ。 「はあ」 「御迷惑でしょうけれど、一寸弁解させて戴きます」 「何ですか?」 「これは僕の妻です。今晩は何処かへ食事に行こうかという約束でした。しかし家へ帰ると出直すのが面
佐々木邦
Translation status
WaitingLog in to request a translation.
Frequently asked questions
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
Free to read
Start reading immediately — no signup required. Create a free account for more books and features.