辻村もと子
辻村もと子 · Japanese
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辻村もと子 · Japanese
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Original (Japanese)
春の落葉 辻村もと子 翌日は明るくはれた初夏らしい日であつた。 ごたごたと敷かれた寢床をあげてしまふと、柩のなくなつた家の中は、急に廣々として何となく物足りなかつた。 早起きの伯父は老人らしいきちようめんな調子で若い者を起して歩いた。 一ばん年下の恭介叔父は、頭からふとんを被つたまま、眠つてゐるのか醒めてゐるのか、いくら起されても起きようとしなかつた。みんなの蒲團をかたづけながら、私はそつと聲をかけた。 「叔父さん――叔父さん? お起きなさいな、もう八時よ――」 聞えたのか聞えないのか、叔父は身動きもしなかつた。襖をはづした次の間から、意地の惡い靜岡の伯父が、くぼんだ眼を光らせてゐた。 「叔父さん――ねえ、お骨揚げに行かなくつちやいけないぢやありませんか」 私は一つとり殘された叔父の寢床に近よつて夜着の上からゆすぶつた。 「うん――」 叔父は夜着の中でひくく答へた。叔父を殘して井戸端に顏を洗ひに出ると、ねぶそくな眼に祖母の愛した躑躅の花が赤くうつつた。 昨日の朝、白木の棺に納めたときの、あの冷たく重い祖母の體の埋まるほど入れた赤い花が、今ごろはその體と一緒に灰になつてゐるのだと思ふと、
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