福永信
福永信 · Japanese
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福永信 · Japanese
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Original (Japanese)
年甲斐もなく不意に思い立った旅で、目的地も「できるだけ遠く」と決めただけで、列車に飛び乗った。 乗り合わせた年配の男と打ち解け、膝を、文字通り突き合わせて、とりとめなく身の上話をした。名前も知らぬ行きずりの者ら特有の親しさといったところだ。 「そうですか。それは、大変だったですね。何か助言ができればいいのだが」 「いいえ。そんなつもりで言ったのではないのです」 私は言った。昼下がり、夏の訪れを鼓舞する南国風の鮮やかな風景が、先刻からまぶしく続いている。 「こちらはそんなつもりで聞いてたのですがね」男が、顔の下だけで笑った。「話を聞いて、そこに悩みを見つけたら、解消するような知恵を授ける。年長の者のそれが、役目ですからな」 「いや、聞いてもらえただけでも、ありがたいですよ。(肩をもみほぐしながら)もうすっかり肩の荷が下りたようです」 「ふむ。そうですかな」 そこだけ黒々と長くのびる眉の奥に、深く人生を知り尽くし、広範な視点の地平へと到達した者独特の眼光が私を鋭く射抜いた。 「どちらへ?」 と、男は着たままでいるコートからウイスキーを取り出して、言った。 「行き先を決めてはないのです。お恥
福永信
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