Vol. 2May 2026

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14,981종 중 13,032종 표시

賢婦人の一例(一幕)

岸田国士

橋本夫人 渥美登 静間氏 静間弓子 女中 東京の郊外――初冬――午後二時頃。 橋本家の奥座敷。 紫檀の机を囲んで座蒲団が四つ。 女中が火鉢に炭をついでゐる。 橋本夫人が現れる。 橋本夫人  その炭は跳ねるから、気をつけてね。女中  はい。橋本夫人  それから、きいちやんが、また、お玄関を泥だらけにしたよ。女中  はい。橋本夫人  (順々に座蒲団の上に坐つてみ

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賢所御神楽の儀

羽田亨

春興殿の南門外、左(東)に鏡と玉を、右(西)に劍を、それ/″\頂きに懸けた一對の大眞榊の間を進み門を入つて左右の幄舍につくことすべて昨日賢所大前の儀の通りである。見上ぐれば殿上南面の中央に垂れさせられた御簾を挾んで、南廂に坐する黒衣の掌典二人、その左に續いて茜袍が九人、末なる一人が南、東兩廂の角、いづれにも見透しの利く場所に位置したのはすべて相圖に任ずるため

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賢い秀雄さんの話

宮原晃一郎

賢い秀雄さんの話 宮原晃一郎 日吉さんの秀雄さんは今年七つ。ほんとに賢い子供だ。毎日、ランドセルをせおつていきほひよく、 「いつてまゐります。」と、ごあいさつをして、家を出る。まつすぐに、道草なんかくはないで、さつさと学校へいつて、教室では先生のおつしやることを、よく聞いてゐて、よくそのとほりにするし、問はれたことには一番早く手をあげて、答をする。家へかへつ

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ダマスカスの賢者

鈴木三重吉

ダマスカスの賢者 鈴木三重吉 一 むかし、ダマスカスといふ町に、イドリスといふなまけものがゐました。貧乏なくせに、はたらくことがきらひなのですからたまりません。或とき、もういよ/\食べるものもなくなり、売りはらふものと言つたつて、ぼろッきれ一つさへないはめになりました。おかみさんは、 「これではもう二人でかつゑて死ぬばかりです。後生だから、どうぞ今日からお金

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賤事業弁

北村透谷

賤事業弁 北村透谷 事業を賤しむといふ事は「文学界」が受けたる攻撃の一なり。而して此攻撃たるや、恐らく余が「人生相渉論」を誤読したるより起りたる者なるべしと思へば、爰に一言するの止むべからざるを信ずるなり。 余は先づ「事業」とは如何なる者なりやを問はざるべからず。次に文学は「事業」といふ標率を以て論ずべき者なりや否やを、問はざる可からず。 余は文学といふ女神

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質問へのお答え

宮本百合子

質問へのお答え 宮本百合子 一 芸術も人の心に慰めと喜びをあたえるものであるということでは、「楽しさ」において娯楽に通じているようですけれども、普通のわけ方では芸術と娯楽は二ツの別のものです。音楽にも軽音楽やダンス・ミュージック、みんなが口ずさむようないろいろな歌。舞踊でもこのごろはやっているスクウェアー・ダンスのようなものが娯楽のためのダンスであって、芸術

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質屋の主人

宇野浩二

最早や昨年のことになるかと思ふが、私はこの雑誌に『質屋の小僧』といふ文章を書いたことがある。すると、一二ヶ月後、私のその文章を見たと云つて、あべこべに以前その質屋の暖簾をくぐつた頃の私の印象を、その『質屋の小僧』が書いたことがある。その頃から一年程たつた今、彼は既に質屋の小僧でなく番頭であつた。名は金井源蔵と云ふ。 以前、その小僧時代に私がよく世話になつた金

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質屋の小僧

宇野浩二

私がどんなに質屋の世話になつたかといふ事は、これまで、小説に、随筆に、既にしばしば書いたことである。だが、私だとても、あの暖簾を単独でくぐるやうになる迄には、余程の決心を要した。私が友人を介して質屋の世話になり始めてから、友人なしに私一人でそこの敷居をまたぐやうになつた迄には、少なくとも二年の月日がかかつた。 それは私が二十四歳の秋の末のことであつた。その秋

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質屋の通帳

薄田泣菫

質屋の通帳 薄田泣菫 京都に住んでゐた頃、たしか花時の事だつたと思ひます。私が縁端でぼんやり日向ぼつこをしてゐると、女中が来客の名刺を取次いで来ました。名刺にはK――とありました。K氏は私には初めての客でしたが、友人H氏の弟子筋にあたる人で、その頃新進作家として一寸売出してゐました。 K氏は座敷に入つて来ました。細面の色の白い、言葉数の至つて少さうな人でした

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質物

徳田秋声

或る日捨三は或るところから届いた原稿料を懐ろにして、栄子の宿を訪問した。訪問といつても、彼に取つてはその宿の帳場の前を通つて行くことが、ちよつと極りのわるいことであつたゞけで、此の頃さう改まつた心持ではなくなつた。勿論最近まで、彼は栄子を訪問したことは、絶体になかつた。若し栄子を訪問するに適当な年輩であつたら、彼も或ひはこの三年間のあひだに、一度や二度くらゐ

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賭博の負債

田中貢太郎

賭博の負債 田中貢太郎 徳化県の県令をしていた張という男は、任期が満ちたのでたくさんの奴隷を伴れ、悪いことをして蒐めた莫大な金銀財宝を小荷駄にして都の方へ帰っていた。 華陰へきた時、先発の奴僕どもは豚を殺し羊を炙って、主人の張の着くのを待っていた。黄いろな服を着た男がどこからきたともなしに入ってきて、御馳走のかまえをしてある処へ坐った。 「お前さんは、たれだ

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クリスマスの贈物

竹久夢二

クリスマスの贈物 竹久夢二 「ねえ、かあさん」 みっちゃんは、お三時のとき、二つ目の木の葉パンを半分頬ばりながら、母様にいいました。 「ねえ、かあさん」 「なあに、みっちゃん」 「あのね、かあさん。もうじきに、クリスマスでしょ」 「ええ、もうじきね」 「どれだけ?」 「みっちゃんの年ほど、おねんねしたら」 「みっちゃんの年ほど?」 「そうですよ」 「じゃあ、

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かれいの贈物

九鬼周造

かれいの贈物 九鬼周造 十二月も半ば過ぎた頃であった。村上は友人の山崎を自宅の昼飯に招いた。独身者同様の村上は時にこうして十五ばかり年下の山崎と会食をしながら寛いだ気もちで談笑するのが好きであった。年齢の相違もあるので二人の間には師弟といったような感覚も交っていた。村上が二階の書斎で手紙を書いていると女中が山崎の来たことを告げながら 「これを頂戴いたしました

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贋物

薄田泣菫

贋物 薄田泣菫 村井吉兵衛が伊達家の入札で幾万円とかの骨董物を買込んだといふ噂を伝へ聞いた男が、 「幾ら名器だつて何万円は高過ぎよう。それにそんな物を唯一つ買つたところで、他の持合せと調和が出来なからうぢやないか。」 といふと、吉兵衛は女と金の事しか考へた事のない頭を、勿体ぶつて一寸掉つてみせた。そして一言一句が五十銭づつの値段でもするやうに、出し惜みをする

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贋物

葛西善蔵

車掌に注意されて、彼は福島で下車した。朝の五時であった。それから晩の六時まで待たねばならないのだ。 耕吉は昨夜の十一時上野発の列車へ乗りこんだのだ、が、奥羽線廻りはその前の九時発のだったのである。あわてて、酔払って、二三の友人から追いたてられるようにして送られてきた彼には、それを訊ねている余裕もなかったのだ。で結局、今朝の九時に上野を発ってくる奥羽線廻りの青

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贋紙幣事件

甲賀三郎

贋紙幣事件 甲賀三郎 一 稀に田舎に来ると実に好いなあと思う。東京なんかに住まないで、こう云う田舎に住んで見たいなあと思う。空気が澄んでいるから空の色が綺麗で、林があって、野原があって、牧場があって、静かでのんびりしていて本当に好い。東京からそう遠くない所にこんな好い所があるんだもの、日曜には活動なんか見に行かないで、空気の好い広々とした田舎へ来る方が、どん

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寺田寅彦

蒲団を引っかぶって固く目を閉じると何も見えぬ。しばらくすると真赤な血のような色の何とも知れぬものが暗黒の中に現れる。なお見ているとこれが次第に大きくなって突然ぐるぐると廻り出す。それはそれは名状し難い速さで廻っているかと思うと急に花火の開いたようにパッと散乱してそのまた一つ一つの片が廻転しながら縦横に飛び違う。血の色はますます濃くなって再び真黒になったと思う

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赤いねこ

沖野岩三郎

雨が しとしとと ふりました。その あくる日の おひるころ、一人の おぢいさんが、町の つじに 立ててある 大きな かんばんを 見ながら、ひとりごとを いって ゐました。 「この ゑは、何の ゑだらう、火事の ゑかしら。」 おぢいさんは、しきりに かんがへこんで ゐました。そこへ 一人の 男の 子が とほりかかって、 「おぢいさん、何を かんがへて ゐるんで

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赤ずきん

グリムヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール

むかしむかし、あるところにちっちゃな、かわいい女の子がおりました。その子は、ちょっと見ただけで、どんな人でもかわいくなってしまうような子でしたが、だれよりもいちばんかわいがっていたのは、この子のおばあさんでした。おばあさんは、この子の顔を見ると、なんでもやりたくなってしまって、いったいなにをやったらいいのか、わからなくなってしまうほどでした。 あるとき、おば

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赤ちやん

平山千代子

赤ちやん 平山千代子 七月十四日、私は丁度西生田の勤労奉仕でクタ/\だつたが、とにかくお母様をお見舞することとした。 病院へ行つて靴を預けようとしたら、意地悪な下足のお婆さんに、 「そんな汚い靴! そこへ置いときな!」と叱られた。四階へ行つて暫らく間ごつき、ヤツと見つけて戸を開けたら、手前の小さな寢台が、モソツと少し動いた。 「おや?」と第六感にピンと来たの

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赤いステッキ

壺井栄

生まれつき目のよく見えない克子が兄の健とつれだって外へ遊びに出るとき、お母さんはきまったように二人にいって聞かせる。 「気いつけてな、克が石垣から落ちたりせんようにな」 それほど石垣の多い村である。海ぞいの村道に表を向けて立ちならぶ家々の裏口あたりから、もうゆるい勾配につれて石段がはじまり、村の背負っている山のてっぺんの方までも低い石垣の段々畑が続いているよ

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赤ずきんちゃん

グリムヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール

むかし、むかし、あるところに、ちいちゃいかわいい女の子がありました。それはたれだって、ちょいとみただけで、かわいくなるこの子でしたが、でも、たれよりもかれよりも、この子のおばあさんほど、この子をかわいがっているものはなく、この子をみると、なにもかもやりたくてやりたくて、いったいなにをやっていいのかわからなくなるくらいでした。それで、あるとき、おばあさんは、赤

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赤とピンクの世界

片山広子

農村が町となり、ながめが好く空気もきれいなので、だんだん新しい家が出来て、住む人も多くなつて来た。町のひらけ始めた時分に出来た十軒ばかりの家は、それぞれ屋根の色がちがひ坪数もちがつてゐるが、どの家もみんなみづみづしい生垣で、庭に椿や海棠やぼけ、また木犀や山茶花なぞ植ゑてあり、門前の道は何時もきれいに掃かれてこの辺一帯は裕福なインテリ層のすまひとすぐわかる。そ

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赤いろうそくと人魚

小川未明

人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。北の海にも棲んでいたのであります。 北方の海の色は、青うございました。あるとき、岩の上に、女の人魚があがって、あたりの景色をながめながら休んでいました。 雲間からもれた月の光がさびしく、波の上を照らしていました。どちらを見ても限りない、ものすごい波が、うねうねと動いているのであります。 なんという、さびし

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