Vol. 2May 2026

Buku

Perpustakaan pengetahuan dunia domain publik

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今年の文壇を回顧する

牧野信一

一、昭和八年度文壇は貴下に如何なる感想を与へましたか 二、本年中で発表された作品で最も印象に残つたものは何ですか 二、あらためて振り返つて見ると、小生は今年あちこちと、さ迷ひ回つてゐたゝめに殆ど何も読まなかつたらしいのです。多少は読んだのだつたかも知れませんが、何も彼も濛つとしてゐてとりとめがありません、斯んな近事を誌すこと誠に汗顔の至りでありますが、何卒悪

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今年発表した一ばん好きな自作について

牧野信一

今年発表した作品のうちでは次の三篇に幾分の好意を感ずる。小林君と河上君の言葉を覚へてゐる。 ラガド大学参観記 吊籠と月光と 歌へる日まで(西部劇通信、アウエルバツハの歌) 以上は相通ずる意味を持つものであり、またその他単独のものを幾つか発表したが、特に好き嫌ひを区別することは困難である。 ●図書カード

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今度こそ

片岡鉄兵

今度こそ 片岡鉄兵 甲吉の野郎、斯う云うのだ。 「何しろ俺には年とったおふくろもあるし、女房もあるし、餓鬼もあるし――」 だからストライキには反対だと云うんだ。それから、あいつはそっと小声でつぶやく、 「若え奴らのオダテに乗れるかい」 スキャップにはスキャップの理窟があるもんだ。馘になったら困る。今の世の中に仕事を捜すだけでも大変なんだ。 「俺ア厭だよ、おふ

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今度の出し物について

岸田国士

今度の出し物について 岸田國士 岡田禎子さんの「クラス会」は、一読してこれはなかなか面白いものだと思つた。女ばかりの舞台といふ仕組みはともかく、女でなければ書けない心理と情景のニユアンスが、みごとに私を捉へた。女優さんたちの「練習曲」としても相当歯ごたへのある、恰好なものであるし、これに男ばかりの舞台を一幕並べることにでもしたら、ちよつと変つた趣向ではあるま

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今度の選挙と婦人

宮本百合子

今度の選挙と婦人 宮本百合子 一 一年目で、また総選挙がはじまります。去年の三月登場した婦人代議士三十九名の活動も、この一年間には私達の目に、ある程度までその現実を知らされました。これらの大勢の婦人代議士の中で、日本の民主化と人民生活の向上、そのことからもたらされる婦人の社会生活の改善のために、次回も当選してほしいと希望される人は何人あるでしょう。 一年間の

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今後の寺院生活に対する私考

坂口安吾

寺院に特殊な生活があるとすれば禁欲生活より外にはないと思はれます。しかし一般人間に即した生活即ち情欲や物欲に即した生活のあることを忘れる訳には行きません。寺院の人々は禁欲生活を過重し勝ちでとかく所謂煩悩に即した生活の中にも道徳律や悟脱の力のあることを忘れてゐる様です。禁欲生活が道徳的に勝れてゐる理由もなく、又特に早く悟れる理由もありません。生活はその人の信条

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今後の寺院生活に対する私考

坂口安吾

今後の寺院生活に対する私考 坂口安吾 寺院に特殊な生活があるとすれば禁欲生活より外にはないと思われます。しかし一般人間に即した生活即ち情欲や物欲に即した生活のあることを忘れる訳には行きません。寺院の人々は禁欲生活を過重し勝ちでとかく所謂煩悩に即した生活の中にも道徳律や悟脱の力のあることを忘れている様です。禁欲生活が道徳的に勝れている理由もなく、又特に早く悟れ

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今後を童話作家に

小川未明

自由と純真な人間性と、そして空想的正義の世界にあこがれていた自分は、いつしかその芸術の上でも童話の方へ惹かれて行くようになってしまいました。 ○ 私の童話は、ただ子供に面白い感じを与えればいいというのではない。また、一篇の寓話で足れりとするわけではない。もっと広い世界にありとあらゆるものに美を求めたいという心と、また、それらがいかなる調和に置かれた時にのみ正

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今戸心中

広津柳浪

太空は一片の雲も宿めないが黒味渡ッて、二十四日の月はまだ上らず、霊あるがごとき星のきらめきは、仰げば身も冽るほどである。不夜城を誇り顔の電気燈にも、霜枯れ三月の淋しさは免れず、大門から水道尻まで、茶屋の二階に甲走ッた声のさざめきも聞えぬ。 明後日が初酉の十一月八日、今年はやや温暖かく小袖を三枚重襲るほどにもないが、夜が深けてはさすがに初冬の寒気が身に浸みる。

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今戸狐

小山内薫

今戸狐 小山内薫 これは狐か狸だろう、矢張、俳優だが、数年以前のこと、今の沢村宗十郎氏の門弟で某という男が、或夏の晩他所からの帰りが大分遅くなったので、折詰を片手にしながら、てくてく馬道の通りを急いでやって来て、さて聖天下の今戸橋のところまで来ると、四辺は一面の出水で、最早如何することも出来ない、車屋と思ったが、あたりには、人の影もない、橋の上も一尺ばかり水

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今日になるまで

上村松園

今日になるまで 上村松園 私は明治八年四月二十三日四条通り御幸町西へ行った所に生まれました。父はこの年の二月既に歿して、私は二十六歳の母の胎内で父の弔いを見送りました。 明治十五年四月、八つで小学校六級に入学しました。草履袋をさげ石盤と石筆を風呂敷に包んで通学したものでした。 その頃習ったものは修礼(お作法)手芸が主なものでした。私は絵が好きで、いつも石盤に

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今日 02 今日

西東三鬼

陳氏来て家去れといふクリスマス クリスマス馬小屋ありて馬が住む クリスマス藷一片を夜食とす 除夜眠れぬ仏人の猫露人の犬 猫が鶏殺すを除夜の月照らす 蝋涙の冷えゆく除夜の闇に寝る 切らざりし二十の爪と除夜眠る 朝の琴唄路に鼠が破裂して うづたかき馬糞湯気立つ朝の力 寒の夕焼雄鶏雌の上に乗る 老婆来て赤子を覗く寒の暮 木枯の真下に赤子眼を見張る 百舌鳥に顔切られ

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今日の作家と読者

宮本百合子

今日の作家と読者 宮本百合子 この一二年来、文学的な本を読む読者の数がぐっとふえていることは周知の事実であって、それらの新しい読者層の何割かが、通俗読物と文学作品との本質の区別を知らないままに自身の購買力に従っているという現象も、一般に注意をひいて来ている。そこに、今日の文化の地味の問題だの文学の成長の可能性の問題が、複雑な現今の社会生活の一面として横たわっ

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今日の女流作家と時代との交渉を論ず

宮本百合子

今日の女流作家と時代との交渉を論ず 宮本百合子 一 女性からどうしてよい芸術が生れ難いか、またこれまで多く女性によって発表された作品に、どうして時代との交渉が少なかったかというような問題に対して、私は先ず第一に文芸の本質たる個人の成長ということを考てみたいと思います。私は物を見る時に、必ず個人という観念を基礎にして物を見ます。その物を見究めることに於いて、個

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今日の感想

坂口安吾

今日の感想 坂口安吾 ……先頃、文芸銃後運動の講演会か何かがあって、壇上の諸家が期せずして一人も文学を語らなかったというので、この事実に非常に感動した文章を書いていた作家があったけれども、僕にはどうも不思議な気持がするばかりで腑に落ちないこと夥しい。文学が直接戦争の役に立たないことは僕も承知しているから、余り大きなことを言う元気はないのだけれども、これぐらい

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今日の感想

坂口安吾

今日の感想 坂口安吾 先頃、文芸銃後運動の講演会か何かゞあつて、壇上の諸家が期せずして一人も文学を語らなかつたといふので、この事実に非常に感動した文章を書いてゐた作家があつたけれども、僕にはどうも不思議な気持がするばかりで腑に落ちないこと夥しい。文学が直接戦争の役に立たないことは僕も承知してゐるから余り大きなことを言ふ元気はないのだけれども、これぐらゐ美事に

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今日の文化の諸問題

宮本百合子

今日の文化の諸問題 宮本百合子 たとえばこの雑誌も「文化集団」という名をもっているように、われわれの見ききする範囲には非常に多く文化という言葉が使われ、卑近な一例をとれば、アンカにまで文化という名をつけてあやしまないようになっている。ところでその文化というものはどういう内容をもったものであるかと考える時、そこに二様の解釈があると思われる。広く人間の社会が創造

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今日の文学の展望

宮本百合子

今日の文学の展望 宮本百合子 過去への瞥見 今日の日本文学のありようは、極めて複雑である。そのいりくんだ縦横のいきさつを明瞭に理解するために、私たちは一応過去にさかのぼって、この三四年来日本の文学が経て来た道のあらましを顧みることが便利であろうと思う。 既に知られているとおり、日本の一般的な社会情勢は昭和六年の秋、満州事変というものが起ってから万般非常に急速

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今日の文学と文学賞

宮本百合子

今日の文学と文学賞 宮本百合子 どこの国にでも、文化、文芸の業績に対する賞というものはあるらしい。その詮衡が世界的な規模で行われ、最もひろい意味で人類的な影響をもつ仕事に与えられるという点で、ノーベル賞が国際的な権威をみとめられていることは、誰でも知っている。近頃になってからのドイツでは、そのノーベル賞をドイツ人が受けることを禁じ、ドイツ民族文化、文芸の最高

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今日の文学に求められているヒューマニズム

宮本百合子

今日の文学に求められているヒューマニズム 宮本百合子 今日、文学の大衆化ということが非常に云われて来ている。かつてプロレタリア文学が、芸術の内容と表現における社会性との問題にふれて、従来の純文学と通俗文学とは質において異った階級の社会性に立つ文学として、文学の大衆性をとりあげた。当時の大衆という認識の内容の中心は労働者・農民におかれてあった。通俗文学はなるほ

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今日の文学の諸相

宮本百合子

今日の文学の諸相 宮本百合子 一 年の瀬という表現を十二月という歳末の感情に結びつけて感じると、今年は年の瀬を越すなどというものではなく、年の瀬が恐ろしくひろい幅とひどい勢いでどうどうと生活もろとも轟き流れている気がする。一年の終りの月というしめくくりの気分なんかどこにもない。いろいろな事象がそれ自身の収拾つかない課題の生々しい断面をむき出しながら、益々幅と

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今日の文学の鳥瞰図

宮本百合子

今日の文学の鳥瞰図 宮本百合子 本年の建国祭を期して文化勲章というものが制定された。これは人も知る如く日本で始めてのことである。早速絵では竹内栖鳳や横山大観がその文化勲章を授与され、科学方面でも本多博士その他が比較的困難なく選ばれた。文学の分野に於ては、まだこの勲章を授与された作家がない。これは、非常に興味ある点であると思う。何故なら、どこの国でも文化のこと

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