Vol. 2May 2026

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Perpustakaan pengetahuan dunia domain publik

14,981종 중 5,304종 표시

南画三題

中谷宇吉郎

墨絵を始めてから、もう二十年近くになる。北支事変の一寸前頃、難病を患って、伊豆の伊東で、二年間療養したことがある。その時に覚えたのが、随筆を書くことと、墨絵とである。 その後随筆の方は、大分註文が多くなったが、墨絵の方は、あまり註文がなかった。無料でやったのがいけなかったのかもしれない。もっともそればかりでなく、本質的な理由もある。何時まで経っても、上手にな

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南画を描く話

中谷宇吉郎

昨年の春から、自分では南画と称しているところの墨絵を描くことを始めた。 南画を描くなどというと、段々年をとると、油絵よりも墨絵の方が良くなるそうだねなどと冷かされることもある。しかし私の場合は、そういう趣味が枯れて来たなどという洒落れた話ではなく、もっと現実な理由があるのである。 それはこの頃のように段々忙しくなって来ては、どうにも油絵など描いている閑はなく

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南からの種子

竹内浩三

南から帰った兵隊が おれたちの班に入ってきた マラリヤがなおるまでいるのだそうな 大切にもってきたのであろう 小さい木綿袋に 見たこともない色んな木の種子 おれたちは暖炉に集って その種子を手にして説明をまった これがマンゴウの種子 樟のような大木に まっ赤な大きな実がなるという これがドリアンの種子 ああこのうまさといったら 気も狂わんばかりだ 手をふるわ

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南蛮寺門前

木下杢太郎

南蛮寺門前 木下杢太郎 登場人物 童子、順礼等        舞妓白萩 千代            伊留満喜三郎 常丸            学頭 菊枝            所化長順 老いたる男及び行人二三   所化乗円、其他学僧 うかれ男          老いたる侍 永禄末年のこと。但風俗は必しも史実に拠らず、却つて今人の眼に親うするものとす。秋の日、

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南蛮秘話森右近丸

国枝史郎

南蛮秘話森右近丸 国枝史郎 1 「将軍義輝が弑された。三好長慶が殺された、松永弾正も殺された。今は下克上の世の中だ。信長が義昭を将軍に立てた。しかし間もなく追って了った。その信長も弑されるだろう。恐ろしい下克上の世の中だ……明智光秀には反骨がある。羽柴秀吉は猿智慧に過ぎない。柴田勝家は思量に乏しい。世は容易に治まるまい……武田家は間もなく亡びるだろう。波多野

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南部の鼻曲り

久生十蘭

これからする話を小説に書いてくれないかね、と玉本寿太郎がいった。 玉本は開戦初期の比島戦でトムプソン銃にやられて左脚を四分の三ほど短くされたが、終戦後は、じぶんからなんとか局の通訳を買って出て、毎日いそがしそうにしている。 「まあ、やめておく」と私がいうと彼は、「みょうなやつだな、終いまで聞きもしないで。君はいつか『日本人としても立派な日本人は、アメリカ人に

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南風譜

牧野信一

卓子に頬杖をして滝本が、置額に容れたローラの写真を眺めながら、ぼんやりと物思ひに耽つてゐた時、 「守夫さん、いらつしやるの?」 と、稍激した調子の声が、窓の外から聞えてきた。 (誰だらう?) 滝本は、この時、見境へもなく、返事が出来るほど、心が晴れやかでなかつた。 「矢ツ張り、留守なのか知ら?」 と、窓の外の人は呟いだ。 それで、滝本に――百合子だ……と解つ

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南風譜・梗概

牧野信一

滝本守夫が父親を失つた後の家庭上の紛争に取り囲まれながら異母妹のローラのアメリカからの訪れを待つてゐるうちに、友達の妹(森百合子)の家出の事などを中心にして彼方此方に様々な形の低気圧が起らうとしてゐる明るい海辺の村の面貌を写し来つたのです。その間人物と事件が稍複雑となり、手短かに梗概を述べることは困難ではなからうかと気づいたので、一言に及んだ次第ですが、これ

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南風譜 ――牧野信一へ――

坂口安吾

私は南の太陽をもとめて紀伊の旅にでたのです。友達の家の裏手の丘から、熊野灘が何よりもいい眺めでした。 このあたりは海外へ出稼ぎに行く風習があります。それゆゑ変哲もない漁村の炉端で、人々は香りの高い珈琲をすすり、時には椰子の実の菓子皿からカリフォルニヤの果物をつまみあげたりするのです。 友達の家に旅装をといて、浴室を出ようとすると、夕陽を浴びた廊下の角から私の

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単独犯行に非ず

坂口安吾

単独犯行に非ず 坂口安吾 普通の時間に家を出て登庁せずに三越へ行って開店するまでに無理な自動車散歩までして開店に間に合ったということは、誰かと会見するような何か重大な約束があったのではなかろうかと考えられる。その約束は国鉄労組の誰かとの会見ではなく、もっとプライベイトなものにちがいない。だから犯人はプライベイトなものかプライベイトを利用したものである。犯行は

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単独行

加藤文太郎

一月二十六日 快晴 六・〇〇島々 一一・〇〇沢渡 一・三〇中ノ湯 三・一五―三・五〇大正池取入口 四・五〇上高地温泉 中ノ湯附近は発電所入口や、水路工事などの人々が始終通るので、雪も少なく楽だった。ここでスキーを履き、トンネルを出てすぐ河原に下り川床伝いに行く。いつも世話になる大正池の水路取入口で、山の様子を聞く。去年の二月、上高地におった日、遊びにきたここ

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単純化は唯一の武器だ

小川未明

ガンヂイーのカッダール主義は、単なる生活の単純化でないであろう。それには、多分に政治的の意味が含まれているからだ。しかし、それに、私達は、教えられるところがないだろうか。 私の子供時分には、まだ、周囲に封建時代の風習も、生活様式も残っていた。女達は、自から糸車を廻わして、糸をつむぎ、機に織って、それを着たのも珍らしくなかった。資本主義の波が、村々を襲って来た

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単純な詩形を思う

小川未明

極めて単調子な、意味のシンプルな子守唄が私の心を魅し去ってしまう。そして、それをいつまで聞いていても、私は、この子守唄を聞くことに飽きない。しかも、それを歌っているものが、無智の田舎娘であるなら、なおさら好い。 青い海のような空に、月が出て、里川縁の柳の木の枝についている細かな葉が、風に戦いで、うす闇の間から、蝙蝠が飛び出て来る。まだ西の黒い森に、紅い夕日が

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単純な質問

中谷宇吉郎

最近日本から帰って来たばかりという一世の老人に会ったら、矢つぎ早にいろいろな質問をされて、大いに返答に窮した。 アメリカにおける日本人一世の大部分は、昔カリフォルニア州へ移民として渡って来た人たちで、いわゆる高等教育を受けていない。中には小学校もやっと卒業した程度という人も相当ある。しかしそういう人たちの中には、非常な苦労をして、子供たち、すなわち二世には、

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アインシュタイン博士のこと

長岡半太郎

アインシュタインは相對性原理を以つて世界に名を知られているが、その原理を辨えている人は幾人あるか知り難い。古典化した物理學を刷新して、その田臭を拂拭した一人であることは異論ないのである。 直話によれば、十八歳の頃から時間空間の問題に屈託して、七年後、遂に特殊相對性原理を發表するを得た。その案出した方程式はローレンツ變換と同じであるが、これを意味づけることは頗

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ねじくり博士

幸田露伴

ねじくり博士 幸田露伴 当世の大博士にねじくり先生というがあり。中々の豪傑、古今東西の書を読みつくして大悟したる大哲学者と皆人恐れ入りて閉口せり。一日某新聞社員と名刺に肩書のある男尋ね来り、室に入りて挨拶するや否、早速、先生の御高説をちと伺いたし、と新聞屋の悪い癖で無暗に「人を食物にする」会話を仕出す。ところが大哲学者もとより御人好の質なれば得意になッて鼻を

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博士問題とマードック先生と余

夏目漱石

博士問題とマードック先生と余 夏目漱石 上 余が博士に推薦されたという報知が新聞紙上で世間に伝えられたとき、余を知る人のうちの或者は特に書を寄せて余の栄選を祝した。余が博士を辞退した手紙が同じく新聞紙上で発表されたときもまた余は故旧新知もしくは未知の或ものからわざわざ賛成同情の意義に富んだ書状を幾通も受取った。伊予にいる一旧友は余が学位を授与されたという通信

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博士問題の成行

夏目漱石

博士問題の成行 夏目漱石 二月二十一日に学位を辞退してから、二カ月近くの今日に至るまで、当局者と余とは何らの交渉もなく打過ぎた。ところが四月十一日に至って、余は図らずも上田万年、芳賀矢一二博士から好意的の訪問を受けた。二博士が余の意見を当局に伝えたる結果として、同日午後に、余はまた福原専門学務局長の来訪を受けた。局長は余に文部省の意志を告げ、余はまた局長に余

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「ソーンダイク博士」序文

フリーマンリチャード・オースティン

私はこの作品集のなかの作品を、「倒叙小説」と「直接小説」の二つに分けたが、この分類のしかたについては、一口いっとかなければならない。 もともと、推理小説というものは、興味の中心が知的であるという点で、ほかのいっさいの小説とちがうのである。むろん、推理小説のなかにも、感情だとか、劇的な行動だとか、ユーモアだとか、哀感だとか、恋愛だとかの要素はふくまれているだろ

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ヤトラカン・サミ博士の椅子

牧逸馬

ヤトラカン・サミ博士の椅子 牧逸馬 1 マカラム街の珈琲店キャフェ・バンダラウェラは、雨期の赤土のような土耳古珈琲のほかに、ジャマイカ産の生薑水をも売っていた。それには、タミル族の女給の唾と、適度の蠅の卵とが浮かんでいた。タミル人は、この錫蘭島の奥地からマドラスの北部へかけて、彼らの熱愛する古式な長袖着と、真鍮製の水甕と、金いろの腕輪とを大事にして、まるで瘤

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カライ博士の臨終 人生の最も厳粛であるべき瞬間に、わたくしがもし笑ひの衝動をおさへることができぬとしたら、いつたいどんな罪に問はれるであらう?

岸田国士

ある大学の哲学教授、加来典重は、カントの研究家としてその名を知られ、近年は、ハイデッゲルなどの名をもその講義の間にしばしばはさみはするが、学生の一人がサルトルについて質問を行つたところ、それは自分の専門以外であると答へたことによつて、相手に首をひねらせた逸話の持主である。時に文明批評や随想に類する文章を二、三の雑誌に発表することもあるが、その衒学的臭味によつ

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博多にて

小泉八雲

人力車で旅行していて、できるのはあたりを眺めることと夢見ることくらいである。揺れるので読書はできないし、自分のと連れの人力車が二台並んで走れるような道幅があったとしても、車輪の回る音や風の音がするので会話することもできない。日本の景色の特徴にも慣れてくると、旅行の間、長い休憩の時を除けば、強く印象づけられるような新規な事柄でもなければ、もう見ようともしないの

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博多人形

竹久夢二

博多人形 竹久夢二 お磯は、可愛い博多人形を持っていました。その人形は、黒い眼と薔薇色の頬を持った、それはそれは可愛らしい人形でありましたから、お磯はどの人形よりも可愛がっていました。どこへゆく時にも傍をはなしませんでした。夜寝る時でさえ、そっと傍へ寝かしてやるほどでした。 ある日お磯は、牧場へ茅花を摘みにゆきました。やはりいつものように右の手には御気に入り

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卜居 津村信夫に

堀辰雄

この家のすぐ裏がやや深い谿谷になっていて――この頃など夜の明け切らないうちから其処で雉子がけたたましく啼き立てるので、いつも私達はまだ眠いのに目を覚ましてしまう程だが、――それでも私はその谿谷が悪くなく、よく小さな焚木を拾いがてらずんずん下の方まで降りていったりする。その谿谷の丁度向う側にある、緑色の屋根をした大きなヴィラが、いまはまだ木の枝を透いて手にとる

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