Vol. 2May 2026

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夢判断

寺田寅彦

夢判断 寺田寅彦 友人が妙な夢を見たと云って話して聞かせた。それは田舎の農家で泊った晩のことである。全身がしびれ、強直して動けなくなったが、それが「電気のせい」だと思われた。白い手術着を着た助手らしい男がしきりにあちこち歩き廻ってそれを助けてくれようとするのだが、一向利目がないので困り果てたところで眼がさめたのだという。さめて見たら枕が無闇に固くて首筋が痺れ

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Sepuluh Malam Mimpi

夢十夜

Natsume Sōseki

こんな夢を見た。 腕組をして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている。真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、唇の色は無論赤い。とうてい死にそうには見えない。しかし女は静かな声で、もう死にますと判然云った。自分も確にこれは死ぬなと思った。そこで、そうかね、もう死ぬ

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夢占

楠山正雄

夢占 楠山正雄 一 むかし、摂津国の刀我野という所に、一匹の牡鹿が住んでいました。この牡鹿には二匹仲のいい牝鹿があって、一匹の牝鹿は摂津国の夢野に住んでいました。もう一匹の牝鹿は、海を一つへだてた淡路国の野島に住んでいました。牡鹿はこの二匹の牝鹿の間を始終行ったり来たりしていました。 けれども牡鹿は摂津の牝鹿よりも、淡路の牝鹿の方を、よけい好いていました。そ

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夢の卵

豊島与志雄

夢の卵 豊島与志雄 一 遠い昔のことですが、インドの奥に小さな王国がありました。その国の王様の城は、高い山のふもとに堅い岩で造られていました。前にはきれいな谷川が流れており、後ろには広い森が茂っていました。谷川の水はいつも冷たく澄みきって、苔むした岩の間にさらさらと音を立てていますし、森の奥には何百年となき古い木が立ち並んで、魔物が住んでると言われていて、ほ

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夢の図

豊島与志雄

夢の図 豊島与志雄 木村は云う――。 物を考え、考えあぐんで、椅子に身を託し、或は畳の上に身をなげだして、なお考え続けながら、いつしかうつらうつら仮睡する者は、如何に多くのものを喪失していることでしょう。その頭の中には、思念の断片、さまざまな心象が、とびとびに明滅しています。仮睡者はそれらを意識するが、捕捉することは出来ません。意識しただけで、取逃してしまう

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夢の国

宮原晃一郎

夢の国 宮原晃一郎 一 雪の降る日でした。 吉ちやんは机について学課のお浚へをしてをりました。障子の立つてゐる室の内は、薄暗くて、まるで夕暮の様でした。外にはまだ盛んに雪が積るらしく、時々木の枝からさら/\と雪の落ちる音が聞えました。 「アヽ/\/\」 吉ちやんは大きな口をあけて、欠伸をしました。ふと誰やら自分を呼ぶ声がしますから、振り返つてみますと、暗い片

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夢の国

片山広子

雄心や花ふみにじりわか芽つみほゝゑむすべは知らずあらなむ ふと行きてかへらぬ人よ掌をすべりて消えし玉ならなくに 身の秋にしのぶも悲し日陰草小さく咲きて散りし花はも 天つ世の魂の足音のきこゆらしゆめの国ゆくあかつきの時 思ひなゝあらそひもなき後の世は唯いとまあり眠る人のみ つばさ破れ落ちしはやぶさやけ砂にうなじやかせて遠き空見る うつくしき青葉の岡の殿づくり饑

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夢と実現の能力

岸田国士

夢と実現の能力 岸田國士 私は小学校以来自分の卒業した学校の式以外に卒業式といふものには列席した経験がありません。自分の卒業式に感動するのは勿論でありますが、今日の卒業式から受けた感動は終生忘れ得られないものであります。私も文学者でありますから多少想像力を持つてをるつもりでありますが、私の想像する限りにおいて自分に直接関係のある兄弟や子供の式でもない卒業式に

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夢幻泡影

外村繁

浅黄色の色硝子を張ったような空の色だった。散り雲一つない、ほとんど濃淡さえもない、青一色の透明さで、かえって何か信じられないような美しさである。例えば、ちょっと石を投げる、というような些細な出来事で、一瞬どんな変化が起るかも知れない、と危ぶまれるような美しさだった。そのとき、私には大空を落下する無数の青い破片を想像することもできた。 しかも、そんな美しさは、

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夢と幻を見る家

今野大力

寝室とも書斎とも名附け難い私の室 ここで私は私の好きな事をする 私の家は小さな家である 北国のヌタプカムシペ山脈の畔である 上川平野の隅であるチュウベツを言う アイヌ人種が五十年の昔 鹿を追い熊を追い 狐を追った処である 今まだ太古の伝説鮮やかなる 殖民地の一小邑である 私はここに住んでいる そして小さな安らかな新しい材木の香のする家に 父母があたえた、ささ

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夢御殿

槙村浩

夢に夢見る夢御殿 サンゴルビーの屋根や床 ダイヤモンドの床鏡 庭には金の築山や 銀をとかした噴水に 不老の泉くみませう 不死の薬の雨がふり 金銀宝石ちりばめた よろひかぶとのいでたちに 出てくる勇士の面々は 桃ちゃん、金ちゃん、仁王さん、猿面冠者に清正公、べんけい義経相撲とる、どちら勝つかと思ったら いつの間にやら夜が明けて、夢の御殿は消えて行く (大正十二

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夢日記

キングスフォードアンナ

私がこれから読者に提示しようとしている年代記は意識的に想像力を働かせた結果ではない。題名が示す通りこの十年間の夢の記録である。折々見た夢を日記から掘り起こして、ほぼ時間的な順序に沿って書き写したものだ。夢から覚めた後できるだけ速やかに筆記したため、必然的に文体が未整理であり用語の洗練を欠いているものの、少なくとも生々しい色彩を得てはいる。それぞれのヴィジョン

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夢のような昼と晩

小川未明

赤い花、白い花、赤としぼりの花、いろいろのつばきの花が、庭に咲いていました。そうして、濃い緑色の葉と葉のあいだから、金色の日の光がもれて、下のしめった地の上に、ふしぎな模様をかいていました。 葉がゆれると、模様もいっしょに動いて、ちょうど、水たまりへ落ちた花が、浮いているようにも見えました。 また、どこからともなく、そよ風に、桜の花びらが飛んできました。 「

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夢の殺人

浜尾四郎

夢の殺人 浜尾四郎 「どうしたって此の儘ではおけない。……いっそやっつけちまおうか」 浅草公園の瓢箪池の辺を歩きながら藤次郎は独り言を云った。然し之は胸の中のむしゃくしゃを思わず口に出しただけで、別段やっつけることをはっきり考えたわけではなかった。ただ要之助という男の存在のたとえなき呪わしさと、昨夜の出来事が嘔吐を催しそうに不快に、今更思い起されたのである。

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夢殿

楠山正雄

夢殿 楠山正雄 一 むかし日本の国に、はじめて仏さまのお教えが、外国から伝わって来た時分のお話でございます。 第三十一代の天子さまを用明天皇と申し上げました。この天皇がまだ皇太子でおいでになった時分、お妃の穴太部の真人の皇女という方が、ある晩御覧になったお夢に、体じゅうからきらきら金色の光を放って、なんともいえない貴い様子をした坊さんが現れて、お妃に向かい、

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夢殿

北原白秋

昭和九年八月中旬、台湾巡歴の帰途、神戸に迎へたる妻子と共に紀州白良温泉に遊ぶ。滞在数日。 白良 白良の浜に遊びて 白良の ましららの浜、まことしろきかも。驚くと、我が見ると、まことしろきかも。踏みさくみ、手ぐさとり、あなあはれ、まことしろきかも。子らと来て、足投げて、膝くみて、ただにしろきかも。白良の ましららの浜、松が根も、渚べも、日おもても、ただにしろき

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夢殿殺人事件

小栗虫太郎

夢殿殺人事件 小栗虫太郎 一、密室の孔雀明王 ――(前文略)違法とは存じましたけれども、貴方様がお越しになるまで、所轄署への報告を差控える事に致しました。と申しますのは、まことにそれが、現世では見ようにも見られない陀羅尼の奇蹟だからで御座います。 ある金剛菩薩の歴然とした法身の痕跡を残して、高名な修法僧は無残にも裂き殺され、その側に尼僧の一人が、これもまた不

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夢に荷風先生を見る記

佐藤春夫

荷風先生の回想なら拙作「小説永井荷風伝」のなかに何一つ漏さず書き尽して一つの話題をも漏らさなかつた。だからここに新しく書きかへる事は何もない。 小説荷風伝を書いた結果、荷風に関して別に書くべき事が生じたのは「実説永井荷風」とでも銘を打つて非小説の文壇生活の実情をもルポルタージュとして記録して置きたいと思つてゐるが、それはここに書くには少々長すぎるばかりか、あ

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夢に荷風先生を見る記

佐藤春夫

荷風先生の回想なら拙作「小説永井荷風伝」のなかに何一つ漏さず書き尽して一つの話題をも漏らさなかった。だからここに新しく書きかえる事は何もない。 小説荷風伝を書いた結果、荷風に関して別に書くべき事が生じたのは「実説永井荷風」とでも銘を打って非小説の文壇生活の実情をもルポルタージュとして記録して置きたいと思っているが、それはここに書くには少々長すぎるばかりか、あ

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大きなかに

小川未明

それは、春の遅い、雪の深い北国の話であります。ある日のこと太郎は、おじいさんの帰ってくるのを待っていました。 おじいさんは三里ばかり隔たった、海岸の村へ用事があって、その日の朝早く家を出ていったのでした。 「おじいさん、いつ帰ってくるの?」と、太郎は、そのとき聞きました。 すっかり仕度をして、これから出てゆこうとしたおじいさんは、にっこり笑って、太郎の方を振

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大つごもり

樋口一葉

大つごもり 樋口一葉 (上) 井戸は車にて綱の長さ十二尋、勝手は北向きにて師走の空のから風ひゆう/\と吹ぬきの寒さ、おゝ堪えがたと竈の前に火なぶりの一分は一時にのびて、割木ほどの事も大臺にして叱りとばさるゝ婢女の身つらや、はじめ受宿の老媼さまが言葉には御子樣がたは男女六人、なれども常住内にお出あそばすは御總領と末お二人、少し御新造は機嫌かいなれど、目色顏色呑

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大つごもり

樋口一葉

井戸は車にて綱の長さ十二尋、勝手は北向きにて師走の空のから風ひゆうひゆうと吹ぬきの寒さ、おお堪えがたと竈の前に火なぶりの一分は一時にのびて、割木ほどの事も大台にして叱りとばさるる婢女の身つらや、はじめ受宿の老媼さまが言葉には御子様がたは男女六人、なれども常住家内にお出あそばすは御総領と末お二人、少し御新造は機嫌かいなれど、目色顔色を呑みこんでしまへば大した事

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大つごもり

樋口一葉

井戸は車にて綱の長さ十二尋、勝手は北向きにて師走の空のから風ひゆう/\と吹ぬきの寒さ、おゝ堪えがたと竈の前に火なぶりの一分は一時にのびて、割木ほどの事も大臺にして叱りとばさるる婢女の身つらや、はじめ受宿の老媼さまが言葉には御子樣がたは男女六人、なれども常住家内にお出あそばすは御總領と末お二人、少し御新造は機嫌かいなれど、目色顏色を呑みこんで仕舞へば大した事も

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