Vol. 2May 2026

Buku

Perpustakaan pengetahuan dunia domain publik

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浮浪学生の話

シュウォッブマルセル

抑われは寄辺ない浮浪学生、御主の御名によりて、森に大路に、日々の糧を乞ひ歩く難渋の学徒である。おのれ今、忝くも尊い光景を観、幼児の言葉を聞いた。われは己が生涯のあまり清くない事を心得てゐる、路の傍の菩提樹下に誘惑に負けた事も知つてゐる。偶われに酒を呑ませる会友たちの、よく承知してゐる如く、さういふ物は滅多に咽喉を通らない。然しわれは人を傷け害ふ党とは違ふ。幼

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浮浪漫語

辻潤

浮浪漫語 浮浪漫語 辻潤 ●本文中、底本のルビは「(ルビ)」の形式で処理した。 ●本文中、[※1~5]は底本からの変更部分に関する入力者注を表す。注はファイルの末尾に置いた。 自分はなによりもまず無精者だ。面倒くさがりやである。常に「無為無作」を夢みている。従ってこれまで自分で進んで自分を表現(文字をかりて)しようとしたことは殆どないといってもいい。まったく

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サガレンの浮浪者

広海大治

ただようてくる温ったかい三平汁の香堪え兼ねて牧草の束に顔を埋めるしのびよる背筋の冷さ浅い眠りの夢は破れるああ! 一杯の飯を食いたい 赤い毛布を巻きつけた むくんだ足寒気は骨の中まで突き通す伸び放題の鼻ひげに呼吸は霜をたくわえ鼻孔はきんきんとひからびる 破目板の隙間から躍り込む風小屋に舞う雪神楽やがて粉雪はうず高く層を重ねる辛うじて乾草の小屋に宿り打ち震え闇の

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浮輪

中谷宇吉郎

シカゴはミシガン湖に面しているので、夏になると、ビーチは湖水浴の連中で、たいへんな賑わいである。とくに今年は何十年ぶりとかの暑さで、土曜日曜などは、鎌倉の海岸のような騷ぎである。 湖といっても本州の半分くらいある大きい湖なので、見たところは、全く海の感じである。對岸はもちろん見えない。波もふだんはかなりあって、水難の危險は、いつも注意している必要がある。 砂

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浮雲

林芙美子

なるべく、夜更けに着く汽車を選びたいと、三日間の収容所を出ると、わざと、敦賀の町で、一日ぶらぶらしてゐた。六十人余りの女達とは収容所で別れて、税関の倉庫に近い、荒物屋兼お休み処といつた、家をみつけて、そこで独りになつて、ゆき子は、久しぶりに故国の畳に寝転ぶことが出来た。 宿の人々は親切で、風呂をわかしてくれた。小人数で、風呂の水を替へる事もしないとみえて、濁

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浴室

田山花袋

……此処まで来れば、もはや探し出されるおそれはない。あらゆるものから遁れて来た。あらゆる障碍から、あらゆる圧迫から、あらゆる苦痛から。かう思つて、Kはじつとあたりを眺めた。 サツと流れてゐる谷川が一番先きに眼に入つた。それはさう大して好いといふほどではないが、ところどころに岩石があつて、その上で新しい鍔広の麦稈帽を日にかゞやかしつゝ避暑客が鮎を釣つてゐるのが

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浴槽の花嫁

牧逸馬

浴槽の花嫁 牧逸馬 1 英国ブラックプウルの町を、新婚の夫婦らしい若い男女が、貸間を探して歩いていた。彼らが初めに見にはいった家は、部屋は気に入った様子で、ことに女の方はだいぶ気が動いたようだったが風呂が付いていないと聞くと、男は、てんで問題にしないで、細君を促してさっさと出て行った。コッカア街に、クロスレイ夫人という老婆が、下宿人を置いていた。つぎに二人は

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「浴泉記」など

堀辰雄

温泉のあまり好きでない私に温泉のことを何か書けといふのである。何か書けるだらう位に、高をくくつてゐたが、いざ書かうとすると、何を書いたらいいのか分らないので、なかなか書き出せない。…… さつきから机には向つてゐるものの、しやうがないので、二三日前に買つてきた Insel 版のゲエテ詩集をあつちこつちめくつてゐる許りである。拾ひ讀みなどをしてゐるのではない。そ

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浴衣

木村荘八

浴衣 木村荘八 源之助の演る芝居に女団七と言ふのがある。大きな茶のべんけいの浴衣を着て、黒繻子の帯を平つたく四角に締め、すそを片方だけ高くからげるから白の蹴出しが出て、それが素足にかゝる。頭は崩れたつぶしかおばこか何かで、顔は白く塗り、眉は無いにちがひない。――手に抜身の脇差を持つて、黒塀の前で義理あるおとら婆アを殺す狂言だ。 ――序でに之れも書いておくが、

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浴衣小感

木村荘八

浴衣小感 木村荘八 一 浴衣がけは便利だといふ、無論便利だ。久しく外国へ行つてゐると夏は故郷の浴衣がけが恋しくなつてかなはないといふが、さもあらうと思ふ。便利で涼しい点では外国のどの夏衣裳にも勝るものだらう。 然したゞ便利で涼しいが故に起つたものかと云ふと、それは一つにはさうに相違ない。夏不便で涼しくないものは行はれるわけがない。しかしより以上に、それが衣裳

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太宰治

海 太宰治 東京の三鷹の家にいた頃は、毎日のように近所に爆弾が落ちて、私は死んだってかまわないが、しかしこの子の頭上に爆弾が落ちたら、この子はとうとう、海というものを一度も見ずに死んでしまうのだと思うと、つらい気がした。私は津軽平野のまんなかに生れたので、海を見ることがおそく、十歳くらいの時に、はじめて海を見たのである。そうして、その時の大興奮は、いまでも、

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尾崎放哉

海 尾崎放哉 庵に帰れば松籟颯々、雑草離々、至つてがらんとしたものであります。芭蕉が弟子の句空に送りました句に、「秋の色糠味噌壺も無かりけり」とあります。これは徒然草の中に、世捨人は浮世の妄愚を払ひ捨てゝ、糂汰瓶ひとつも持つまじく、と云ふ処から出て居るのださうでありますが、全くこの庵にも、糠味噌壺一つ無いのであります。縁を人に絶つて身を方外に遊ぶ、などと気取

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竹内浩三

ぼくが 帰るとまもなく まだ八月に入ったばかりなのに 海はその表情を変えはじめた 白い歯をむき出して 大波小波を ぼくにぶっつける ぼくは 帰るとすぐに 誰もなぐさめてくれないので 海になぐさめてもらいにやってきた 海はじつにやさしくぼくを抱いてくれた 海へは毎日来ようと思った 秋は 海へまっ先にやってくる もう秋風なのだ 乾いた砂をふきあげる風だ ぼくは眼

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梶井基次郎

……らすほどそのなかから赤や青や朽葉の色が湧いて来る。今にもその岸にある温泉や港町がメダイヨンのなかに彫り込まれた風景のように見えて来るのじゃないかと思うくらいだ。海の静かさは山から来る。町の後ろの山へ廻った陽がその影を徐々に海へ拡げてゆく。町も磯も今は休息のなかにある。その色はだんだん遠く海を染め分けてゆく。沖へ出てゆく漁船がその影の領分のなかから、日向の

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海へ

小川未明

この村でのわんぱく者といえば、だれ知らぬものがなかったほど、龍雄はわんぱく者でした。親のいうこともきかなければ、また他人のいうこともききませんでした。 よく友だちを泣かしました。すると泣かされた子供の親は、 「またあの龍雄めにいじめられてきたか。」 といって、なかには怒って親がわざわざ龍雄の家へ告げにやってくるものもありました。こんなわけで龍雄の両親は、わが

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海ぼたる

小川未明

ある日、兄弟は、村のはずれを流れている川にいって、たくさんほたるを捕らえてきました。晩になって、かごに霧を吹いてやると、それはそれはよく光ったのであります。 いずれも小さな、黒い体をして、二つの赤い点が頭についていました。 「兄さん、よく光るね。」と、弟が、かごをのぞきながらいいますと、 「ああ、これがいちばんよく光るよ。」と、兄はかごの中で動いている、よく

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海のかなた

小川未明

海に近く、昔の城跡がありました。 波の音は、無心に、終日岸の岩角にぶつかって、砕けて、しぶきをあげていました。 昔は、このあたりは、繁華な町があって、いろいろの店や、りっぱな建物がありましたのですけれど、いまは、荒れて、さびしい漁村になっていました。 春になると、城跡にある、桜の木に花が咲きました。けれど、この咲いた花をながめて、歌をよんだり、詩を作ったりす

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海ほおずき

小川未明

梅雨のうちに、花という花はたいていちってしまって、雨が上がると、いよいよ輝かしい夏がくるのであります。 ちょうどその季節でありました。遠い、あちらにあたって、カン、カン、カンカラカンノカン、……という磬の音がきこえてきました。 「また、あのお祭りの時節になった。ほんとうに月日のたつのは早いものだ。」と、お母さんはいわれました。 あや子はある日のこと、学校の帰

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海をわたる

田山花袋

長い間心に思つたT温泉はやつと近づいた。其処に行きさへすれば、あとは帰つたやうなものである。そこからFへは三里、その埠頭には海峡をわたる連絡船が朝に夜にちやんと旅客を待つてゐて、その甲板の上に乗つて居さへすれば、ひとり手にその身は向うへ運ばれて行くのである。W町からの乗合自動車の中でKはほつと呼吸をついた。 「明日の朝の連絡船では、ちよつと忙しいね」 一緒に

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海のまぼろし

小川未明

浜辺に立って、沖の方を見ながら、いつも口笛を吹いている若者がありました。風は、その音を消し、青い、青い、ガラスのような空には、白いかもめが飛んでいました。 ここに、また二人の娘があって、一人の娘は、内気で思ったことも、口に出していわず、悲しいときも、目にいっぱい涙をためて、うつむいているというふうでありましたから、心で慕っていた若者のいうことは、なんでもきい

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海のおばあさん

小川未明

大昔のことでありました。海のおばあさんといって、たいそう気むずかしやで、すこしのことにも腹を立てるおそろしいおばあさんが海の中に住んでいました。だれもあまり近寄りませんでしたから、おばあさんは、さびしかったのです。 ちょうど、そのころ、山に、また山のおばさんといって、やさしいおばさんが住んでいました。だれにでもしんせつで、気にいらないことがあっても、笑ってい

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海からきた使い

小川未明

人間が、天国のようすを知りたいと思うように、天使の子供らはどうかして、下界の人間は、どんなような生活をしているか知りたいと思うのであります。 人間は、天国へいってみることはできませんが、天使は、人間の世界へ、降りてくることはできるのでありました。 「お母さま、どうぞ、わたしを一度下界へやってくださいまし。」 天使の子供は、母親に頼んだのであります。けれど、お

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海からきた卵

塚原健二郎

ミル爺さんは貧しい船乗りでした。若いときからつぎつぎに外国の旅をつづけてきましたので、もう今では大がいの国は知っているのでした。ところがただ一つ日本を知らなかったのです。いつも、印度を通って支那へやってくる爺さんの船は、上海で用をすますと、そこから故郷のフランスの方へ帰っていってしまうのです。 「日本へ行ってみたいな。そしたら、もう船乗りをやめてもいい。」

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海が呼んだ話

小川未明

自転車屋のおじさんが、こんど田舎へ帰ることになりました。清吉や、正二にとって、親しみの深いおじさんだったのです。三輪車の修繕もしてもらえば、ゴムまりのパンクしたのを直してもくれました。また、その家の勇ちゃんとはお友だちでもありました。おじさんは、犬や、ねこが好きでした。いい人というものは、みんな生き物をかわいがるとみえます。 勇ちゃんは、こんど田舎の小学校へ

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