Vol. 2May 2026

Buku

Perpustakaan pengetahuan dunia domain publik

Menampilkan 11.088 dari 14.981 buku

白羊宮

薄田淳介

わがゆくかたは、月明りさし入るなべに、 さはら木は腕だるげに伏し沈み、 赤目柏はしのび音に葉ぞ泣きそぼち、 石楠花は息づく深山、――『寂靜』と、 『沈默』のあぐむ森ならじ。 わがゆくかたは、野胡桃の實は笑みこぼれ、 黄金なす柑子は枝にたわわなる 新墾小野のあらき畑、草くだものの 釀酒は小甕にかをる、――『休息』と、 『うまし宴會』の塲ならじ。 わがゆくかたは

JA
Hanya teks asli

白いシヤツの群

田中貢太郎

清は仲間の安三から金の分け前を要求せられてゐた。彼はそれを傍の者に知られないやうにと、自分の眼の前へひよつとこ顔を突出してゐる相手の言葉を押へつけた。 「まア、飲め、飲め、酒を飲まない奴は、話せないよ」 清はビールのビンを手にして安三のカツプに注いだ。 「酒も飲むがな。酒も飲むが、あれも貰ふがな、」 安三は小さな眼をちか/\動かした。 「君は夢でも見たのか、

JA
Hanya teks asli

白い花

種田山頭火

白い花 種田山頭火 私は木花よりも草花を愛する。春の花より秋の花が好きだ。西洋種はあまり好かない。野草を愛する。 家のまわりや山野渓谷を歩き廻って、見つかりしだい手あたり放題に雑草を摘んで来て、机上の壺に投げ入れて、それをしみじみ観賞するのである。 このごろの季節では、蓼、りんどう、コスモス、芒、石蕗、等々何でもよい、何でもよさを持っている。 草は壺に投げ入

JA
Hanya teks asli

白い花赤い茎

田中貢太郎

何時の比のことであったか、高崎の観音山の麓に三人の小供を持った寡婦が住んでいた。それはある歳の暮であった。山の前の親戚の家に餅搗があって、其の手伝いに頼まれたので、小供を留守居にして置いて、朝早くから出かけることになった。 小供と云うのは、十三歳になる女の子と、八歳になる男の子と、それから五歳になる女の子であった。寡婦は家を出る時総領女に云った。 「お土産に

JA
Hanya teks asli

白藤

宮本百合子

白藤 宮本百合子 夢で見たような一つの思い出がある。 小さい自分が、ピアノの前で腰かけにかけている。脚をぶらぶらさせて、そして、指でポツン、ポツンと音を出している。はにかんで、ほんとうに弾けるようには指を動かさないで、音だけ出しているのであった。 わきに、一人の若い女のひとが立っていた。ふっくりした二枚重ねの襟もとのところが美しい感じで印象されているが、顔だ

JA
Hanya teks asli

白藤 ――近代説話――

豊島与志雄

草光保治は、戦時中に動員されて外地へ渡り、終戦後復員されて、二ヶ年半ぶりに東京へ戻ってきました。 「東京もずいぶん変ったでしょう。」 戦争の話やその他の話の末、周囲の者がきまって彼に向ける言葉は、それでした。東京もというのは、日本も、時勢も、人々も、その他いろいろなものを含めてのことでした。それに対して彼は、曖昧な微笑と曖昧な言葉とを返しました。 「そうです

JA
Hanya teks asli

白蛇の死

海野十三

白蛇の死 海野十三 浅草寺の十二時の鐘の音を聞いたのはもう半時前の事、春の夜は闌けて甘く悩しく睡っていた。ただ一つ濃い闇を四角に仕切ってポカッと起きているのは、厚い煉瓦塀をくりぬいた変電所の窓で、内部には瓦斯タンクの群像のような油入変圧器が、ウウウーンと単調な音を立てていた。真白な大理石の配電盤がパイロット・ランプの赤や青の光を浮べて冷たく一列に並んでいた片

JA
Hanya teks asli

白蛾 ――近代説話――

豊島与志雄

住居から谷一つ距てた高台の向う裾を走る省線電車まで、徒歩で約二十分ばかりの距離を、三十分ほどもかけてゆっくりと、岸本省平は毎日歩きました。それは通勤の往復というよりは、散歩に似ていました。道筋も気分によって変りました。 会社の方には殆んど仕事らしいものもなく、出勤時間も謂わば自由でした。戦時中仏印に新らしく設けられた商事会社の、本社とは名ばかりの東京の事務所

JA
Hanya teks asli

白血球

豊島与志雄

白血球 豊島与志雄 がらり…………ぴしゃりと、玄関の格子戸をいつになく手荒く開け閉めして、慌しく靴をぬぐが早いか、綾子は座敷に飛び込んできた。心持ち上気した顔に、喫驚した眼を見開いていた。その様子を、母の秋子は針仕事から眼を挙げて、静かに見やった。 「どうしたんです、慌てきって。……今日はいつもより遅かったようですね。」 「ええ、お当番だったのよ。」 手の包

JA
Hanya teks asli

白い路

種田山頭火

白い路 種田山頭火 熟した果実がおのずから落ちるように、ほっかりと眼が覚めた。働けるだけ働いて、寝たいだけ寝た後の気分は、安らかさのうちに一味の空しさを含んでいる。…… 妻はもう起きて台所をカタコト響かせている。その響が何となく寂しい。……寂しさを感じるようではいけないと思って、ガバと起きあがる。どんより曇って今にも降り出しそうだ。何だか嫌な、陰鬱な日である

JA
Hanya teks asli

白い道

徳永直

白い道 徳永直 一 ――ほこりっぽい、だらだらな坂道がつきるへんに、すりへった木橋がある。木橋のむこうにかわきあがった白い道路がよこぎっていて、そのまたむこうに、赤煉瓦の塀と鉄の門があった。鉄の門の内側は広大な熊本煙草専売局工場の構内がみえ、時計台のある中央の建物へつづく砂利道は、まだつよい夏のひざしにくるめいていて、左右には赤煉瓦の建物がいくつとなく胸を反

JA
Hanya teks asli

白銀の失踪

ドイルアーサー・コナン

「ワトソン君、僕は行かなきゃならないんだがね」 ある朝、一緒に食事をしている時にホームズがいった。 「行くってどこへ?」 「ダートムアだ――キングス・パイランドだ」 私は格別おどろきもしなかった。事実、私は、今全イングランドの噂の種になっているこの驚くべき事件に、ホームズが関係しないということをむしろ不思議にさえ思っていたのである。前の日、ホームズは終日眉根

JA
Hanya teks asli

白い門のある家

小川未明

静かな、春の晩のことでありました。 一人の男が、仕事をしていて、疲れたものですから、どこか、喫茶店へでもいって、コーヒーを飲んできたいという心が起こりました。 男は、家の外へ出ました。往来は、あたたかな、おぼろ月夜で、なにもかもが夢を見ているようなようすで、あちらの高い塔も丘も空も森も、みんなかすんで、黒くぼんやりと浮き出して、じっとしていたのです。 彼は、

JA
Hanya teks asli

白い雌鷄の行方

水野仙子

白い雌鷄の行方 水野仙子 一 年老いた父と母と小娘二人との寂しいくらし――それは私が十二の頃の思出に先づ浮んで來る家庭の姿であつた。總領の兄は笈を負うて都に出てゐるし、やむなく上の姉に迎へた養子は、まだ主人からの暇が出ないで、姉と共に隣町のお店に勤めてゐた。町でも繁華な場所に家屋敷はあつたけれど、軒並に賑つてゐる呉服屋や小間物店の間にあつて、私の家ばかりは廣

JA
Hanya teks asli

白雪姫

グリムヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール

むかしむかし、冬のさなかのことでした。雪が、鳥の羽のように、ヒラヒラと天からふっていましたときに、ひとりの女王さまが、こくたんのわくのはまった窓のところにすわって、ぬいものをしておいでになりました。女王さまは、ぬいものをしながら、雪をながめておいでになりましたが、チクリとゆびを針でおさしになりました。すると、雪のつもった中に、ポタポタポタと三滴の血がおちまし

JA
Hanya teks asli

白雪姫

久生十蘭

ある夏、阿曽祐吉という男が、新婚匆々の細君を携帯して、アルプスのシャモニーへ煙霞の旅としゃれたのはよかったが、合の夢もまだ浅い新妻が、ネヴェという質のわるい濡れ雪を踏みそくなって、底知れぬ氷河の割目に嚥みこまれてしまった。 それはモン・ブランの麓、アルジャンティエールから六時間ほどのぼったところにあるラ・トゥルという危険な氷河で、マァヘッドのアルプス案内記に

JA
Hanya teks asli

白い雲

竹内浩三

満州というと やっぱし遠いところ 乾いた砂が たいらかに どこまでもつづいていて 壁の家があったりする そのどこかの町の白い病院に 熱で干いた唇が 枯草のように 音もなく 山田のことばで いきをしていたのか ゆでたまごのように あつくなった眼と 天井の ちょうど中ごろに 活動写真のフィルムのように 山田の景色がながれていたのか あゝその眼に 黒いカーテンが下

JA
Hanya teks asli

白い雲

小川未明

みんなは、なにかすてきに、おもしろいことがないかと、思っているのです。敏ちゃんも、もとより、その一人でありました。往来で、義ちゃんや、武ちゃんや、かつ子さんたちが、集まって、なにか見て笑っています。 「なんだろう?」と、敏ちゃんは、走ってゆきました。 義ちゃんが、真っ黒な砂鉄を紙の上にのせて、両手で持っていると、武ちゃんが、磁石で、紙の裏を摩っています。する

JA
Hanya teks asli

白馬岳

木暮理太郎

今では日本北アルプスの名で広く世に知られている飛騨山脈は、加藤理学士の説に拠ると、凡そ南十度西より北十度東に向って並走せる数条の連脈から成っているものであるという。其連脈の一に白馬山脈というのがある。立山山脈との対称上から又後立山山脈とも呼ばれ、飛騨山脈中の最も長い山脈で、北は日本海岸の親不知附近から起り、越中と越後及び信濃との国境を南走して遠く飛騨国内に達

JA
Hanya teks asli

白い魔の手

長沢佑

七月―― 焼けただれた太陽が地を射す 幽明の地をめざして 行進する華やかな一群 臨時列車は、 ――海へ ――山へ …………………… 誰だッ? 汗を吝しむ奴等は? 土堤の上には わんわんと燃えるかげろう、 じりじりと焼きつける田の底 頭上には、太陽が ありったけの元気で踊ってる。 紺碧の空に浮ぶ一点の雲 みどりの田の面をなでてゆく微風 すがすがしい夏の気分へ

JA
Hanya teks asli

白鳥

マラルメステファヌ

純潔にして生氣あり、はた美はしき「けふ」の日よ、 勢猛き鼓翼の一搏に碎き裂くべきか、 かの無慈悲なる湖水の厚氷、 飛び去りえざりける羽影の透きて見ゆるその厚氷を。 この時、白鳥は過ぎし日をおもひめぐらしぬ。 さしも榮多かりしわが世のなれる果の身は、 今こゝを脱れむ術も無し、まことの命ある天上のことわざを 歌はざりし咎か、實なき冬の日にも愁は照りしかど。 かつ

JA
Hanya teks asli

白い鳥

楠山正雄

白い鳥 楠山正雄 一 むかし近江国の余呉湖という湖水に近い寂しい村に、伊香刀美というりょうしが住んでおりました。 ある晴れた春の朝でした。伊香刀美はいつものようにりょうの支度をして、湖水の方へ下りて行こうとしました。その途中、山の上にさしかかりますと、今までからりと晴れ上がって明るかった青空が、ふと曇って、そこらが薄ぼんやりしてきました。「おや、雲が出たのか

JA
Hanya teks asli

百万人の文学

坂口安吾

百万人の文学 坂口安吾 二十年ほど昔「アドルフ」を買ったら百六十何版とあったのを記憶する。百何年という年月とはいえ、こんな一般向きのしない小説が、チリもつもれば山となるらしい。 フランスで一版というのは、だいたい五万部が単位だということであるが、常にハッキリと、また、歴史的にも、そうであったかどうか知らないが、俗説通りに勘定すると、ほかの出版屋の分もあるだろ

JA
Hanya teks asli

百万長者の花屋

中谷宇吉郎

桑港で、たいへん景氣のいい話を聞いた。 この近年、加州の日本人一世および二世の中に、たくさん百萬長者が出來て、一萬ドルの寄附をぽんと出せる家が十軒以上もあるという話なのである。 それ等の人たちは、例外なく花屋であって、バラとかカーネーションとかいうような花を栽培している。アメリカの食糧過剩生産は、日本にもよく知られているとおりで、主食や蔬菜類を作っている農家

JA
Hanya teks asli