Vol. 2May 2026

Buku

Perpustakaan pengetahuan dunia domain publik

Menampilkan 11.184 dari 14.981 buku

ことの真実

宮本百合子

ことの真実 宮本百合子 一九四九年の春ごろから、ジャーナリズムの上に秘史、実録、実記と銘をうたれた記録ものが登場しはじめた。 氾濫した猥雑な雑誌とその内容はあきられて記録文学、ルポルタージュの特集が新しい流行となった。 記録文学、ノン・フィクションの作品が生れはじめ、またうけ入れられたのには、理由があった。戦争の永い年月、わたしたちの全生活がそのために支配さ

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真の愛国心

新渡戸稲造

長く外国におり、しかも日本人と交わること少く、かえって日々多数の国の人々と交わっていると、各国の国民性をいくらか窺うことが出来るように思う。我輩の勤めている役所に来ている人々は公式にその国の政府から任命されたるものでないから、国家または政府を代表するものではないが、国民そのものはこれを代表せざるを得ない。政府はこれを任命しないとしても、これを推薦するのである

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『アルプスの真昼』(セガンチーニ作)

正宗白鳥

私は先月末の大雪の後、輕井澤の快晴の眞晝の空を仰いで、言語に絶したやうな光景に心をひかれた。天國とか淨土とかいつたやうな常用語ではいひ現せない感じであつた。見なれてゐる山岳や樹木も美妙な精彩を放つてゐるやうな氣持もした。風物が目に映るばかりではなくつて、ひやひやとした清淨な空氣が鼻から入つて、わが心を刺激して、天地の美を感得せしめるのであらうと推測された。

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真昼のお化け

小川未明

光一は、かぶとむしを捕ろうと思って、長いさおを持って、神社の境内にある、かしわの木の下へいってみました。けれど、もうだれか捕ってしまったのか、それとも、どこへか飛んでいっていないのか、ただ大きなすずめばちだけが二、三びき前後を警戒しながら、幹から流れ出る汁へ止まろうとしていました。しかたなく、鳥居のところまでもどってきて、ぼんやりとして立っていると、せみの声

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真珠

坂口安吾

真珠 坂口安吾 十二月八日以来の三ヶ月のあひだ、日本で最も話題となり、人々の知りたがつてゐたことの一つは、あなた方のことであつた。 あなた方は九人であつた。あなた方は命令を受けたのではなかつた。あなた方の数名が自ら発案、進言して、司令長官の容れる所となつたのださうだ。それからの数ヶ月、あなた方は人目を忍んで猛訓練にいそしんでゐた。もはや、訓練のほかには、余念

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真珠塔の秘密

甲賀三郎

真珠塔の秘密 甲賀三郎 一 長い陰気な梅雨が漸く明けた頃、そこにはもう酷しい暑さが待ち設けて居て、流石都大路も暫くは人通りの杜絶える真昼の静けさから、豆腐屋のラッパを合図に次第に都の騒がしさに帰る夕暮時、夕立の様な喧しい蝉の声を浴びながら上野の森を越えて、私は久し振りに桜木町の住居に友人の橋本敏を訪ねた。親しい間とて案内も乞わずにすぐ彼の書斎兼応接室の扉を叩

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真理を求めて ――平和祭に寄す

中井正一

ロマン・ロランは第一次大戦にあたって彼の「戦いを超えて」の中で次のようにいっている。 「真理を求めようとはしないで、それを所有していると称するものと議論することは不可能である。ドイツが日の光りに対して防御壁をつくっている自信の厚い壁を破ることは、今のところ、いかなる精神の力にとっても可能ではない。」 ドイツの多くの哲学者が、すべて背骨を失って、戦の中に巻きこ

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真相かくの如し

坂口安吾

真相かくの如し 坂口安吾 「真相」という雑誌に、私が昨年「風報」にのせた文章が一部抜萃して載っている。これは私の承諾を得たものではなく、全く無断の転載である。 これを私に知らせるために、わざわざ訪ねてきてくれた友人は、著作権法に通じた人であった。彼はニヤニヤしていった。 「著作権法にふれていると思うかね」 「むろん、そうだろう」 「ところがそうじゃないんだ」

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真紅な帆の帆前船

田中貢太郎

遠江の御前崎へ往ったのは大正十四年の二月二日であった。岬には燈台があって無線電信の設備もあった。その燈台の燈光は六十三万燭で十九浬半の遠距離に及ぶ回転燈であった。私は燈台の中を見せてもらって、その後で窓の外へ眼をやった。沖あい遥に霞の中に、敷根らしい島と大島らしい島のどんよりと浮んでいるのを見た。岬の東端の海中には、御前岩、俗に沖の御前と云われている岩があっ

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真説 石川五右衛門『後編』に期待す

坂口安吾

檀君が五右衛門を書くために、はじめて大阪へたつという晩、私たちは銀座で酔っ払った。石川淳もいたようだ。新大阪の記者が檀君につきそっていたね。彼が汽車に乗りおくれないように監視するためであった。 酔っ払う檀君と、それを監視しつつある記者君との滑稽な悪関係は、五右衛門が完結するまでひきつづいて行われる運命のようである。 しかし檀君の監視者は新大阪の記者君だけでは

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真間名所

阪井久良伎

千葉縣市川町眞間に引退してから、最早滿三年に成る。友人桐ヶ谷洗鱗畫伯逝いて一年以上、話相手に乏しい余は、切めて史蹟名勝に依つて心を慰めんとするが、一向に趣味の上に心のない町の人々は、史蹟など念頭においてゐない樣である。明治六年習志野の演習へ行幸遊ばされた明治大帝が、その樹下を御通行の際「美事なる松よ」とお褒めになつた市川町の名物三本松も、其一本が盤屈して街道

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真間の手古奈

国枝史郎

真間の手古奈 国枝史郎 一 一人の年老いた人相見が、三河の国の碧海郡の、八ツ橋のあたりに立っている古風な家を訪れました。 それは初夏のことでありまして、河の両岸には名に高い、燕子花の花が咲いていました。 茶など戴こうとこのように思って、人相見はその家を訪れたのでした。 縁につつましく腰をおろして、その左衛門という人相見は、戴いた茶をゆるやかに飲んで、そうして

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真間・蘆屋の昔がたり

折口信夫

真間・蘆屋の昔がたり 折口信夫 この国学院大学の前身の国学院、及び国学院大学で、私ども万葉集を習ひました。その時分ちようど、木村正辞先生といふ、近世での万葉学者がをられまして、私ども教へて頂きました。 その外に、畠山健先生が、万葉集を教へてをられました。木村先生といふのは、旧時代から名高い万葉学者で、謂はゞ正しい伝統を持つた方です。畠山先生は万葉やら、源氏や

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真鬼偽鬼

岡本綺堂

真鬼偽鬼 岡本綺堂 一 文政四年の江戸には雨が少なかった。記録によると、正月から七月までの半年間にわずかに一度しか降雨をみなかったという事である。七月のたなばたの夜に久しぶりで雨があった。つづいて翌八日の夜にも大雨があった。それを口切りに、だんだん雨が多くなった。 こういう年は、いわゆる片降り片照りで、秋口になって雨が多いであろうという、老人たちの予言がまず

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眠い一日

牧野信一

「電灯を点けて煙草を喫かす、喫ひ終ると再び灯りを消してスツポリと夜着を頭から引き被る――真暗だ。彼は、眼を視開いてゐた。……云ふまでもなく、何も考へてゐない。眠り度い! と希ふ心は、とうに麻痺してゐる。……時計の音ばかりが、イヤに勢急に響いて来る、――一寸快よいやうな気もする。――間もなく彼は、また慌てゝ灯りを点ける……。一種特別な疲れを覚えて、また指の先が

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眠れる人

堀辰雄

その女が僕を見てあんまり親しげに微笑したので、僕はその女について行かずにゐられなかつた。もうすべてのものは眠つてゐた。ただ風だけが眼ざめてゐた。が、それとても、町中に散らばつてゐる紙屑をすら動かすほどのものではなかつた。それはむしろ空氣の流れと云つた方がいい。それが僕をうしろから押すのである。眼を閉ぢてそれに押されるままになりながら、僕ははげしい疲勞を感じて

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眠り人形

野村胡堂

「お母様、泣いていらっしゃるの?」 よし子は下からのぞくように、母親の顔を見上げました。 「いえ、泣きはしません。なんにも泣くようなことはないじゃありませんか」 「でも、お父様の形見が一つずつなくなってゆくのが心細いって、昨日叔父様へ泣いておっしゃったじゃありませんか」 「この子はまあ」 母親は顔をそむけて、そっと涙をふきました。お正月の銀座はまだ宵の口です

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眠る森のお姫さま

ペローシャルル

一 むかしむかし、王様とお妃がありました。おふたりは、こどものないことを、なにより悲しがっておいでになりました。それは、どんなに悲しがっていたでしょうか、とても口ではいいつくせないほどでした。そのために、世界じゅうの海という海を渡って、神様を願をかけるやら、お寺に巡礼をするやらで、いろいろに信心をささげてみましたが、みんな、それはむだでした。 でもそのうち、

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眠い町

小川未明

この少年は、名を知られなかった。私は仮にケーと名づけておきます。 ケーがこの世界を旅行したことがありました。ある日、彼は不思議な町にきました。この町は「眠い町」という名がついておりました。見ると、なんとなく活気がない。また音ひとつ聞こえてこない寂然とした町であります。また建物といっては、いずれも古びていて、壊れたところも修繕するではなく、烟ひとつ上がっている

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眺望する

萩原朔太郎

すべては黒く凍つてゐるさびしくかたまる岩の上にみじめに歪んだ松の幹に景色は凍え、飢ゑ、まづしく光つて叫ぶばかり。 この侘しく灰色なる空の下に私たちの心はまづしく語り 孤獨になやみて重たくよりそふ少女よあの遠い空の雷鳴をあなたは聽くかかしこの空にひるがへる浪浪の高いひびきをあなたは聽くか。 過去よながいながい孤獨の影よその影を岩にひきずる冬の日の薄暗い濱邊に立

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徳永直

眼 徳永直 「ね、あんた、今のうち、尾久の家(親類)へでも、行っちゃったがいいと思うんだけど……」 女房のお初が、利平の枕許でしきりと、口説きたてる。利平が、争議団に頭を割られてから、お初はモウスッカリ、怖気づいてしまっている。 「何を……馬鹿な……逃げ出すなんて、そんな……アッ、ツ、ツ」 眼をむいて、女房を怒鳴りつけようとしたが、繃帯している殴られた頭部の

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