Vol. 2May 2026

Buku

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Menampilkan 11.664 dari 14.981 buku

笑わない娘

小川未明

あるところに、なに不足なく育てられた少女がありました。ただ一人ぎりで、両親にはほかに子供もありませんでしたから、娘は生まれると大事に育てられたのであります。 世間にも知られるほどの金持ちでありましたから、娘はりっぱな家に住み、食べ物から着る物まで、ほかの子供らには、とうていそのまねのできないほど、しあわせに日を送ることができたのであります。 娘は大きくなると

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笑わなかった少年

小川未明

ある日のこと、学校で先生が、生徒たちに向かって、 「あなたたちはどんなときに、いちばんお父さんや、お母さんをありがたいと思いましたか、そう感じたときのことをお話しください。」と、おっしゃいました。 みんなは、目をかがやかして、手をあげました。最初にさされたのは、竹内でありました。 「私が、病気でねていましたとき、お父さんは毎晩めしあがるお好きな酒もお飲みにな

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笑う悪魔

野村胡堂

「勇、一杯つき合わないか、ガード下のお光っちゃんは、怨んで居たぞ、――近頃早坂さんは、何処か良い穴が出来たんじゃないかって――」 古参の外交記者で、十年も警視庁のクラブの主にされて居る虎井満十が、編輯助手の卓の上へ、横合から薄禿げた頭を突き出して斯んなことを言うのです。 「冗談じゃないよ、市内版がこれから始まるんだ、電報はやけに多いし、電話は引っ切り無しだが

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笑いの歌

ブレイクウィリアム

緑の森がよろこびの声で笑い 波だつ小川が笑いながら走ってゆく、 空気までが私たちの愉快な常談で笑い 緑の丘がその声で笑い出す。 牧場がいきいきした緑で笑い きりぎりすが楽しい景色の中で笑う、 メアリとスーザンとエミリとが 可愛い口をまるくしてハ・ハ・ヒと歌う。 私たちが桜んぼとくるみの御馳走をならべると その樹の蔭できれいな鳥が笑っている、 さぁ元気で愉快に

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どこで笛吹く

小川未明

ある田舎に光治という十二歳になる男の子がありました。光治は毎日村の小学校へいっていました。彼は、いたっておとなしい性質で、自分のほうからほかのものに手出しをしてけんかをしたり、悪口をいったりしたことがありません。けれど、どこの学校のどの級にでも、たいてい二、三人は、いじの悪い乱暴者がいるものです。 光治の級にも、やはり木島とか梅沢とか小山とかいう乱暴のいじ悪

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笛吹川の上流(東沢と西沢)

木暮理太郎

笛吹川は秩父街道最奥の部落である広瀬附近から上流になると子酉川と呼ばれている。広瀬から稍や爪先上りの赤土道を、七、八町も行くと、原中に一本の大きな水楢か何かの闊葉樹が生えている側で路が二つに岐れる。右は雁坂峠へ出るもので、今は峠ノ沢の製板業が盛になった為に、板を運搬するトロッコの鉄路が通じている。左に沿うて下り気味に辿って行くと雁坂峠から発する峠ノ沢の下流(

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符牒の語源

三遊亭金馬

何商売にも隠し言葉、隠語、俗に符牒というものがある。この符牒にも通り符牒と内符牒とがあって、通り符牒は同商売であればどこへ行っても通用するが、内符牒というのはその家だけの符牒だから、同商売でもほかの家の者がきいたのではわからない。 すべての符牒に上品なものは少ない。 われわれ咄家も昔はずいぶん符牒を使ったものだ。見習から前座になるまで、この楽屋符牒を覚えるの

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第一義の道

島木健作

第一義の道 島木健作 「もう何時かしら」と眼ざめた瞬間におちかは思つた。思はずはつとした氣持で、頭を上げて雨戸の方を見た。戸の外はまだひつそりとして、隙間のどの一つからも白んだ向うはのぞかれはしない。安心して、寢返りを打つたが、まだどこか心の焦點のきまらぬ氣持で眼をしばたたいてゐると、闇のなかに浮動する樟腦の匂ひがかすかに動いた部屋の空氣につれてほのかに鼻さ

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第三者

サキ

東部カルパチア山地の森の中である。 ある冬の寒い晩、一人の男が銃を片手に耳をすましていた。ちょっとみると、鳥か獣があらわれるのを待っているようだ。が、じつのところはそうでないのである。この男――ウルリッヒ・フォン・グラドウィツは、人間があらわれるのを待っているのだ。 彼が所有する山林には、野獣がたくさんいた。でも山林のはずれのこのあたりには、そんなにいない。

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第二真珠抄

北原白秋

ゆめはうつつにあらざりき、うつつはゆめよりなほいとし、まぼろしよりも甲斐なきはなし。 幽かなるこそすべなけれ、美しきものみなもろし、尊きものはさらにも云はず。 ひとのいのちはいとせめて、日の光こそすべなけれ、麗かなるこそなほ果敢な。星、月、そよかぜ、うす雲のゆくにまかする空なれども。 ふりそそぐものみなあはれなり、雨、雪、霰、雹に霙、それさへたちまち消え失せ

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第二芸術論について

坂口安吾

近ごろ青年諸君からよく質問をうけることは俳句や短歌は芸術ですかといふことだ。私は桑原武夫氏の「第二芸術論」を読んでゐないから、俳句や短歌が第二芸術だといふ意味、第二芸術とは何のことやら、一向に見当がつかない。第一芸術、第二芸術、あたりまへの考へ方から、見当のつきかねる分類で、一流の作品とか二流の芸術品とかいふ出来栄えの上のことなら分るが、芸術に第一とか第二と

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第二邪宗門

北原白秋

あな熱し、あな苦し、あなたづたづし。 わが熱き炎の都、 都なる煉瓦の沙漠、 沙漠なる硫黄の海の広小路、そのただなかに、 饑ゑにたるトリイトン神の立像、 水涸れ果てし噴水の大水盤の繞には、 白琺瑯の石の級ただ照り渇き痺れたる。 そのかげに、紅き襯衣ぬぎ 悲しめる道化芝居の触木うち、 自棄に弾くギタルラ弾者と、癪持と、 淫の舞の眩暈、 さては火酒かぶりつつ強ひて

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第四階級の文学

中野秀人

文学も効用漸減法に支配されるものである。何と云っても文学を哺むに最も適した土地は貴族社会であった。寝て居て食える社会であった。閑人の社会に文学は生れる。けれども掘り返され掘り返されする内に、此の土地に投ぜられた資本及び労働に対する報酬は減って来た。播かれた種が皆な烏に攫って行かれたり、唐茄子に糸瓜が実ったりして来た。そこで勇敢な人々は第三階級の土地に出掛けて

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あられ笹

宮本百合子

あられ笹 宮本百合子 宗達 宗達の絵の趣などは、知っている人には知られすぎていることだろうが、私はつい先頃源氏物語図屏風というものの絵はがきに縮写されているのを見て、美しさに深いよろこびを感じた。 宗達は能登の人、こまかい伝記はつまびらかでないが寛永年間に加賀侯に仕え、光琳によって大成された装飾的な画風を創めた画家である。と辞典に短かく書かれてある。 なるほ

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斎藤茂吉

『書』のことになると、中華の人々は昔から偉い。シンの王右軍一人の存在だって、もはや沢山だといふ気持がするのに、ぞくぞくとその後に偉い人が出て居る。しかし私は書のことは分からずにしまつた。蘭亭序だつて、右軍がどの程度に偉いのか、つひに分からずにしまつた。そこで、私は書のことなどは論じられない。 私はある年、中国の北平に遊び、ルリシヤンといふ所を散歩した。そこに

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筆のしづく

幸徳秋水

筆のしづく 幸徳秋水 一 近日何ぞ傷心の事多きや、緑雨は窮死し、枯川は絏紲の人となる、風日暖にして木々の梢緑なる此頃の景色にも、我は中心転た寂寞の情に堪へず、意強き人は女々しと笑はん、我は到底情を矯むるの力なし。 緑雨は病めりき、左れど彼の死せるは病めるが為めに死せるにはあらず、病を養ふ能はざるが為めに死せるなり、繰返していふ、緑雨の死せるは病ありしが為めに

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筆にも口にもつくす

北大路魯山人

筆にも口にもつくす 北大路魯山人 ある日、ある女人と、こんな話をした。 「先生、料理をするときの心がけについて話していただけませんでしょうか」 「なるほど、君はなかなかいいことを聞くね。方法を聞かずに、心がけを聞くところに見どころがあるね。それはね、まず、親切ということだ。親切を欠くなということだ」 「ハイ、親切を欠くな……でございますか」 「そうだ、真心だ

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筍の美味さは第一席

北大路魯山人

筍の缶詰ものは、一流日本料理の料理になる資格はないが、二流以下の料理用としては、年中、日本料理にも中国料理にも重宝されているくらいだから、美食原品として一等席へ坐してもよいものであろう。 彼の廿四孝の孟宗は、母のために雪の地下深く竹の芽、すなわち筍を掘って有名であるが、筍は降雪期の前、すでに地下深く萌芽しているから、別にふしぎなことではない。 京阪の一流料理

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あきまろに答ふ

正岡子規

「も」の字につきて質問に御答申候。「も」の字は元来理屈的の言葉にて俳句などにては「も」の字の有無をもって月並的俗句なるか否かを判ずることさえあるくらいに候えども、さりとて「も」の字ことごとく理屈なるにも無之候。拙作に対する質問に答えんは弁護がましく聞えて心苦しき限りながら議論は議論にて巧拙の評にあらねば愚意試に可申述候。 「も」の字にも種類ありて「桜の影を踏

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あきまろに答ふ

正岡子規

あきまろに答ふ 正岡子規 「も」の字につきて質問に御答申候。「も」の字は元来理窟的の言葉にて、俳句などにては「も」の字の有無を以て月並的俗句なるか否かを判ずる事さへある位に候へども、さりとて「も」の字尽く理窟なるにも無之候。拙作に対する質問に答へんは弁護がましく聞えて心苦しき限りながら、議論は議論にて巧拙の評にあらねば愚意試に可申述候。 「も」の字にも種類あ

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答案落第

太宰治

答案落第 太宰治 「小説修業に就いて語れ。」という出題は、私を困惑させた。就職試験を受けにいって、小学校の算術の問題を提出されて、大いに狼狽している姿と似ている。円の面積を算出する公式も、鶴亀算の応用問題の式も、甚だ心もとなくいっそ代数でやればできるのだが、などと青息吐息の態とやや似ている。 いろいろ複雑にくすぐったく、私は、恥ずかしい思いである。 スタート

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筧の話

梶井基次郎

私は散歩に出るのに二つの路を持っていた。一つは渓に沿った街道で、もう一つは街道の傍から渓に懸った吊橋を渡って入ってゆく山径だった。街道は展望を持っていたがそんな道の性質として気が散り易かった。それに比べて山径の方は陰気ではあったが心を静かにした。どちらへ出るかはその日その日の気持が決めた。 しかし、いま私の話は静かな山径の方をえらばなければならない。 吊橋を

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筬の音

折口信夫

わが車は、とある村に入りぬ。 軒ごとに吊りほせるかけ菜の、あるかなきかの風にゆらめきて、鶏のこゑ、長閑にきこゆ。 轍におこる塵かろく舞ひ、藪ぎはの緋桃の花、ほろり/\散る。高安の春、いま闌なり。 いつしか、村をはなれつ。から/\と軋り行くの右左、みだれ咲く菜の花遠くつゞきて、蒸すばかり立ちのぼる花の香の中を、黄なる、白き、酔心地に蝶の飛びては憩ひ、いこひては

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