Vol. 2May 2026

Buku

Perpustakaan pengetahuan dunia domain publik

Menampilkan 12.528 dari 14.981 buku

虔十公園林

宮沢賢治

虔十公園林 宮沢賢治 虔十はいつも縄の帯をしめてわらって杜の中や畑の間をゆっくりあるいているのでした。 雨の中の青い藪を見てはよろこんで目をパチパチさせ青ぞらをどこまでも翔けて行く鷹を見付けてははねあがって手をたたいてみんなに知らせました。 けれどもあんまり子供らが虔十をばかにして笑うものですから虔十はだんだん笑わないふりをするようになりました。 風がどうと

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虚子君へ

夏目漱石

虚子君へ 夏目漱石 昨日は失敬。こう続けざまに芝居を見るのは私の生涯において未曾有の珍象ですが、私が、私に固有な因循極まる在来の軌道をぐれ出して、ちょっとでも陽気な御交際をするのは全くあなたのせいですよ。それにも飽き足らず、この上相撲へ連れて行って、それから招魂社の能へ誘うと云うんだから、あなたは偉い。実際善人か悪人か分らない。 私は妙な性質で、寄席興行その

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虚弱

三島霜川

虚弱 三島霜川 友と二人でブラリと家を出た。固より何處へ行かうといふ、的もないのだが、話にも厭きが來たので、所在なさに散歩と出掛けたのであツた。 入梅になッてからは毎日の雨降、其が辛と昨日霽ツて、庭柘榴の花に今朝は珍らしく旭が紅々と映したと思ツたも束の間、午後になると、また灰色の雲が空一面に擴がり、空氣は妙に濕氣を含んで來た。而て頭が重い。 「厭な天氣だね。

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虚構の春

太宰治

虚構の春 太宰治 師走上旬 月日。 「拝復。お言いつけの原稿用紙五百枚、御入手の趣、小生も安心いたしました。毎度の御引立、あり難く御礼申しあげます。しかも、このたびの御手簡には、小生ごときにまで誠実懇切の御忠告、あまり文壇通をふりまわさぬよう、との御言葉。何だか、どしんとたたきのめされた気持で、その日は自転車をのり廻しながら一日中考えさせられました。というの

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イボタの虫

中戸川吉二

イボタの虫 中戸川吉二 無理に呼び起された不快から、反抗的に、一寸の間目を見開いて睨むやうに兄の顔を見あげたが、直ぐ又ぐたりとして、ヅキンヅキンと痛む顳を枕へあてた。私は、腹が立つてならなかつたのだ。目は閉ぢはしてゐても。枕許に立つてゐて自分を監視してゐるであらう兄の口から、安逸を貪ることを許さないと云ふ風な、烈しい言葉が、今にも迸りさうに思はれてゐたのだ。

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かぶと虫

槙本楠郎

有一君は四年生で、真奈ちやんは二年生です。二人は競争で、毎朝涼しいうちに、夏休みの「おさらひ帳」を勉強します。今日もやつとすませたばかりのところへ、お隣の二年生の宗ちやんが、きれいなお菓子箱をかゝへて、内庭に入つて来ていひました。 「ねえ、いゝものあげようか?」 すると二人はお縁に飛んで出て、いつしよに手を出してさけびました。 「おくれ、僕に!」 「あたしに

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かぶと虫

新美南吉

かぶと虫 新美南吉 一 お花畑から、大きな虫が一ぴき、ぶうんと空にのぼりはじめました。 からだが重いのか、ゆっくりのぼりはじめました。 地面から一メートルぐらいのぼると、横に飛びはじめました。 やはり、からだが重いので、ゆっくりいきます。うまやの角の方へ、のろのろといきます。 見ていた小さい太郎は、縁側からとびおりました。そして、はだしのまま、ふるいを持って

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かぶと虫

新美南吉

お花畑から、大きな虫がいつぴき、ぶうんと空にのぼりはじめました。 からだが重いのか、ゆつくりのぼりはじめました。 地面から一メートルぐらゐのぼると、横にとびはじめました。 やはり、からだが重いので、ゆつくりいきます。うまやの角の方へのろのろいきます。 見てゐた小さい太郎は、縁側からとびおりました。そしてはだしのまゝ、篩をもつて追つかけていきました。 うまやの

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くつは虫

田山花袋

種族が異つても、国が異つても、文化が異つても、矢張人間だから、考へることが似たり寄つたりである。それを思ふと、今更ながら最初にかへることが必要だといふ気がする。経文あつての仏法ではない。また哲学あつての思索ではない。もつと先の先にその縁り起つて来る原始的本体があるのである。それに注目せよ。 △ 華厳を読むと、いろいろと面白いことがあるが、先づ打たれるのは、雑

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ザザ虫の佃煮

佐藤垢石

ザザ虫の佃煮 佐藤垢石 秋の蠅も、私には想い出の深い餌である。私の少年のころのある期間、父は忙しいので私の釣りの相談相手になれなかったことがある。私は、一人で竿から仕掛け、餌のことまで、才覚思案した。 上州へは、秋が殊のほか早く訪れるのが慣わしである。九月上旬になると、赤城と榛名の峡から遠く望む谷川岳や、茂倉岳の方に、黒い雲が立ちふさがって、冷たい風を麓の方

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虫の声

永井荷風

東京の町に生れて、そして幾十年という長い月日をここに送った……。 今日まで日々の生活について、何のめずらしさをも懐しさをも感じさせなかった物の音や物の色が、月日の過ぎゆくうちにいつともなく一ツ一ツ消去って、ついに二度とふたたび見ることも聞くこともできないということが、はっきり意識せられる時が来る。すると、ここに初めて綿々として尽きない情緒が湧起って来る――別

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虫の声

永井荷風

東京の町に生れて、そして幾十年といふ長い月日をこゝに送つた………。 今日まで日々の生活について、何のめづらしさをも懷しさをも感じさせなかつた物の音や物の色が、月日の過ぎゆくうちにいつともなく一ツ一ツ消去つて、遂に二度とふたゝび見ることも聞くこともできないと云ふことが、はつきり意識せられる時が來る。すると、こゝに初めて綿々として盡きない情緒が湧起つて來る――別

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虫干

永井荷風

毎年一度の蟲干の日ほど、なつかしいものはない。 家中で一番広い客座敷の椽先には、亡った人達の小袖や、年寄った母上の若い時分の長襦袢などが、幾枚となくつり下げられ、そのかげになって薄暗く妙に涼しい座敷の畳の上には歩く隙間もないほどに、古い蔵書や書画帖などが並べられる。 色のさめた古い衣裳の仕立方と、紋の大きさ、縞柄、染模様なぞは、鋭い樟脳の匂いと共に、自分に取

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虫干

永井荷風

虫干 永井荷風 毎年一度の虫干の日ほど、なつかしいものはない。 家中で一番広い客座敷の縁先には、亡つた人達の小袖や、年寄つた母上の若い時分の長襦袢などが、幾枚となくつり下げられ、其のかげになつて薄暗く妙に涼しい座敷の畳の上には歩く隙間もないほどに、古い蔵書や書画帖などが並べられる。 色のさめた古い衣裳の仕立方と、紋の大きさ、縞柄、染模様などは、鋭い樟脳の匂ひ

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虫干し

鷹野つぎ

虫干し 鷹野つぎ 海の南風をうけている浜松の夏は、日盛りでもどこか磯風の通う涼しさがありましたが、夜は海の吐き出す熱気のために、却って蒸暑い時もあるのでした。 そうした夜は寝床にうすべりを敷き、私たちも大人の真似をしてひとしきり肩に濡手拭をあてて寝む事もあるのでした。けれどそれも八月頃のことで、九月も終り頃からは、朝あけや、夕方の空は、露っぽい蒼さに澄んでく

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原民喜

二晩ぐらゐ睡れないことがあると、昼はもとより睡れなかった。彼の頭はうつつを吸ひすぎて疲れ、神経はペンさきのやうに尖った。明るい光線の降り注ぐ窓辺のデスクで、彼はペンを走らせた。念想と云ふ奴は縦横に跳梁して彼を焼かうとする。響のいい言葉や、微妙な陰翳や、わけてもすべてのものの上に羽撃く生命への不思議な憧れや…… へとへとに疲れてベットに横はると、更に今度は新し

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めくらぶどうと虹

宮沢賢治

めくらぶどうと虹 めくらぶどうと虹(にじ) 宮沢賢治 城(しろ)あとのおおばこの実(み)は結(むす)び、赤つめ草の花は枯(か)れて焦茶色(こげちゃいろ)になり、畑(はたけ)の粟(あわ)は刈(か)られました。 「刈(か)られたぞ」と言(い)いながら一ぺんちょっと顔(かお)を出した野鼠(のねずみ)がまた急(いそ)いで穴(あな)へひっこみました。 崖(がけ)やほり

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虹のこ

澤西祐典

淹れたての番茶を一口すすって、真由美は何気なくリビングの窓に目をやった。大きな窓からは、琵琶湖が一望できた。 あっ、来る。窓に貼りついた水滴の向こうに広がる湖の色を見て、そう直感した。 朝から小雨続きだった。天気予報によると、午後も曇天らしかった。しかし空は天気予報を裏切って、雲の薄い部分から晴れ間を覗かせている。なにより水の色が澄んで、淡く輝いていた。 真

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虹と感興

上村松園

虹と感興 上村松園 私は今婦女風俗の屏風一双を描いておりますが、これは徳川末期の風俗によったもので、もうそろそろ仕上りに近づいております。 これは東京某家へ納まるものです。もちろん画題のことなどは殆ど私まかせのものですが、私も何か変った図を捉えたいと思いまして、日を送っていました。この依頼を受けたのは、夏前頃のことでしたから、図題も自然と夏季の初め、すなわち

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虹の橋

野口雨情

ある山国に、美しい湖がありました。 この湖には、昔から、いろいろな不思議なことがありました。青々と澄んだ水が急に濁つたり、風もないのに浪が立つたり、空が曇つて星のない晩でも、湖の中にはお星様が映つて見えることなぞもありました。それには何か深い理由があるだらうと、村の人達は思つてゐましたが、湖の中におゐでになる水神様のほかには、誰も知りませんでした。 いろいろ

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虹の橋

久生十蘭

北川千代は栃木刑務所で服役中の受刑者で、公訴の罪名は傷害致死、刑期は六年、二十八年の三月に確定し、小菅の東京拘置所から栃木刑務所に移され、その年の七月に所内で女児を分娩した。 受刑者名簿には北川千代となっているが、記名の女性は二十七年の九月に淡路島の三熊山で死亡しているので、もちろん当人であろうわけはない。北川千代の名で服役しているのは、真山あさひという別個

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虹猫の大女退治

宮原晃一郎

虹猫の大女退治 宮原晃一郎 木精の国をたつて行つた虹猫は、しばらく旅行をしてゐるうち、ユタカの国といふ大へん美しい国につきました。 こゝはふしぎな国でした。大きな森もあれば、えもいはれぬ色や匂ひのする花の一ぱいに生えた大きな/\野原もありました。空はいつも青々とすみわたつて、その国に住まつてゐる人たちはいつも何の不平もなささうに、にこ/\してゐます。でも、た

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虹猫と木精

宮原晃一郎

虹猫と木精 宮原晃一郎 第一回の旅行をすまして、お家へ帰つた虹猫は、第二回の旅行にかゝりました。 或日、れいのとほり、仕度をして、ぶらりと家を出て、どことはなしに、やつて行きますと、とうとう木精の国に来てしまひました。木精といふやつは面白い、愉快な妖精で、人に害をするやうなこともなく、たゞ鳥のやうに木にすまつてゐるのです。けれども鳥とちがつて、飛ぶことはでき

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