Vol. 2May 2026

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東洋の秋

芥川竜之介

東洋の秋 芥川龍之介 おれは日比谷公園を歩いてゐた。 空には薄雲が重なり合つて、地平に近い樹々の上だけ、僅にほの青い色を残してゐる。そのせゐか秋の木の間の路は、まだ夕暮が来ない内に、砂も、石も、枯草も、しつとりと濡れてゐるらしい。いや、路の右左に枝をさしかはせた篠懸にも、露に洗はれたやうな薄明りが、やはり黄色い葉の一枚毎にかすかな陰影を交へながら、懶げに漂つ

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僕は

芥川竜之介

僕は 芥川龍之介 誰でもわたしのやうだらうか?――ジュウル・ルナアル 僕は屈辱を受けた時、なぜか急には不快にはならぬ。が、彼是一時間ほどすると、だんだん不快になるのを常としてゐる。 × 僕はロダンのウゴリノ伯を見た時、――或はウゴリノ伯の写真を見た時、忽ち男色を思ひ出した。 × 僕は樹木を眺める時、何か我々人間のやうに前後ろのあるやうに思はれてならぬ。 ×

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機関車を見ながら

芥川竜之介

機関車を見ながら 芥川龍之介 ……わたしの子供たちは、機関車の真似をしてゐる。尤も動かずにゐる機関車ではない。手をふつたり、「しゆつしゆつ」といつたり、進行中の機関車の真似をしてゐる。これはわたしの子供たちに限つたことではないであらう。ではなぜ機関車の真似をするか? それはもちろん機関車に何か威力を感じるからである。或は彼等自身も機関車のやうに激しい生命を持

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鵠沼雑記

芥川竜之介

鵠沼雑記 芥川龍之介 僕は鵠沼の東屋の二階にぢつと仰向けに寝ころんでゐた。その又僕の枕もとには妻と伯母とが差向ひに庭の向うの海を見てゐた。僕は目をつぶつたまま、「今に雨がふるぞ」と言つた。妻や伯母はとり合はなかつた。殊に妻は「このお天気に」と言つた。しかし二分とたたないうちに珍らしい大雨になつてしまつた。 × 僕は全然人かげのない松の中の路を散歩してゐた。僕

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芥川竜之介

凶 芥川龍之介 大正十二年の冬(?)、僕はどこからかタクシイに乗り、本郷通りを一高の横から藍染橋へ下らうとしてゐた。あの通りは甚だ街燈の少い、いつも真暗な往来である。そこにやはり自動車が一台、僕のタクシイの前を走つてゐた。僕は巻煙草を啣へながら、勿論その車に気もとめなかつた。しかしだんだん近寄つて見ると、――僕のタクシイのへツド・ライトがぼんやりその車を照ら

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耳目記

芥川竜之介

耳目記 芥川龍之介 × 僕等の性格は不思議にも大抵頸すぢの線に現はれてゐる。この線の鈍いものは敏感ではない。 × それから又僕等の性格は声にも現れてゐる。声の堅いものは必ず強い。 × 筍、海苔、蕎麦、――かう云うものを猫の食ふことは僕には驚嘆する外はなかつた。 × 或狂信者のポルトレエ――彼は皮膚に光沢を持つてゐる。それから熱心に話す時はいつも片眼をつぶり、

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仙人

芥川竜之介

仙人 芥川龍之介 この「仙人」は琵琶湖に近いO町の裁判官を勤めてゐた。彼の道楽は何よりも先に古い瓢箪を集めることだつた。従つて彼の借りてゐた家には二階の戸棚の中は勿論、柱や鴨居に打つた釘にも瓢箪が幾つもぶら下つてゐた。 三年ばかりたつた後、この「仙人」はO町からH市へ転任することになつた。家具家財を運ぶのは勿論彼には何でもなかつた。が、彼是二百余りの瓢箪を運

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都会で

芥川竜之介

一 風に靡いたマツチの炎ほど無気味にも美しい青いろはない。 二 如何に都会を愛するか?――過去の多い女を愛するやうに。 三 雪の降つた公園の枯芝は何よりも砂糖漬にそつくりである。 四 僕に中世紀を思ひ出させるのは厳めしい赤煉瓦の監獄である。若し看守さへゐなければ、馬に乗つたジアン・ダアクの飛び出すのに遇つても驚かないかも知れない。 五 或女給の言葉。――いや

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軽井沢で

芥川竜之介

軽井沢で 芥川龍之介 黒馬に風景が映つてゐる。 × 朝のパンを石竹の花と一しよに食はう。 × この一群の天使たちは蓄音機のレコオドを翼にしてゐる。 × 町はづれに栗の木が一本。その下にインクがこぼれてゐる。 × 青い山をひつ掻いて見給へ。石鹸が幾つもころげ出すだらう。 × 英字新聞には黄瓜を包め。 × 誰かあのホテルに蜂蜜を塗つてゐる。 × M夫人――舌の上

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塵労

芥川竜之介

塵労 芥川龍之介 或春の午後であつた。私は知人の田崎に面会する為に彼が勤めてゐる出版書肆の狭い応接室の椅子に倚つてゐた。 「やあ、珍しいな。」 間もなく田崎は忙しさうに、万年筆を耳に挟んだ儘、如何はしい背広姿を現した。 「ちと君に頼みたい事があつてね、――実は二三日保養旁、修善寺か湯河原へ小説を書きに行きたいんだが、……」 私は早速用談に取りかかつた。近々私

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漱石山房の冬

芥川竜之介

漱石山房の冬 芥川龍之介 わたしは年少のW君と、旧友のMに案内されながら、久しぶりに先生の書斎へはひつた。 書斎は此処へ建て直つた後、すつかり日当りが悪くなつた。それから支那の五羽鶴の毯も何時の間にか大分色がさめた。最後にもとの茶の間との境、更紗の唐紙のあつた所も、今は先生の写真のある仏壇に形を変へてゐた。 しかしその外は不相変である。洋書のつまつた書棚もあ

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追憶

芥川竜之介

追憶 芥川龍之介 一 埃 僕の記憶の始まりは数え年の四つの時のことである。と言ってもたいした記憶ではない。ただ広さんという大工が一人、梯子か何かに乗ったまま玄能で天井を叩いている、天井からはぱっぱっと埃が出る――そんな光景を覚えているのである。 これは江戸の昔から祖父や父の住んでいた古家を毀した時のことである。僕は数え年の四つの秋、新しい家に住むようになった

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長崎

芥川竜之介

長崎 芥川龍之介 菱形の凧。サント・モンタニの空に揚つた凧。うらうらと幾つも漂つた凧。 路ばたに商ふ夏蜜柑やバナナ。敷石の日ざしに火照るけはひ。町一ぱいに飛ぶ燕。 丸山の廓の見返り柳。 運河には石の眼鏡橋。橋には往来の麦稈帽子。――忽ち泳いで来る家鴨の一むれ。白白と日に照つた家鴨の一むれ。 南京寺の石段の蜥蜴。 中華民国の旗。煙を揚げる英吉利の船。『港をよろ

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鴉片

芥川竜之介

鴉片 芥川龍之介 クロオド・フアレエルの作品を始めて日本に紹介したのは多分堀口大学氏であらう。僕はもう六七年前に「三田文学」の為に同氏の訳した「キツネ」艦の話を覚えてゐる。 「キツネ」艦の話は勿論、フアレエルの作品に染みてゐるものは東洋の鴉片の煙である。僕はこの頃矢野目源一氏の訳した、やはりフアレエルの「静寂の外に」を読み、もう一度この煙に触れることになつた

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着物

芥川竜之介

着物 芥川龍之介 こんな夢を見た。 何でも料理屋か何からしい。広い座敷に一ぱいに大ぜい人が坐つてゐる。それが皆思ひ思ひに洋服や和服を着用してゐる。 着用してゐるばかりぢやない。互に他人の着物を眺めては、勝手な品評を試みてゐる。 「君のフロックは旧式だね。自然主義時代の遺物ぢやないか。」 「その結城は傑作だよ。何とも云へない人間味がある。」 「何だい。君の御召

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発句私見

芥川竜之介

発句私見 芥川龍之介 一 十七音 発句は十七音を原則としてゐる。十七音以外のものを発句と呼ぶのは、――或は新傾向の句と呼ぶのは短詩と呼ぶのの勝れるに若かない。(勿論かう言ふ短詩の作家、河東碧梧桐、中塚一碧楼、荻原井泉水等の諸氏の作品にも佳作のあることは事実である。)若し単に内容に即して、かう云ふ短詩を発句と呼ぶならば、発句は他の文芸的形式と、――たとへば漢詩

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横須賀小景

芥川竜之介

横須賀小景 芥川龍之介 カフエ 僕は或カフエの隅に半熟の卵を食べてゐた。するとぼんやりした人が一人、僕のテエブルに腰をおろした。僕は驚いてその人をながめた。その人は妙にどろりとした、薄い生海苔の洋服を着てゐた。 虹 僕はいつも煤の降る工廠の裏を歩いてゐた。どんより曇つた工廠の空には虹が一すぢ消えかかつてゐた。僕は踵を擡げるやうにし、ちよつとその虹へ鼻をやつて

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The Komparu Society's Sumida River

金春会の「隅田川」

芥川竜之介

金春会の「隅田川」 芥川龍之介 僕は或早春の夜、富士見町の細川侯の舞台へ金春会の能を見に出かけた。と云ふよりも寧ろ桜間金太郎氏の「隅田川」を見に出かけたのである。 僕の桟敷へ通つたのは「花筐」か何かの済んだ後、「隅田川」の始まらない前のことである。僕は如何なる芝居を見ても、土間桟敷に満ちた看客よりも面白い芝居に出会つたことはない。尤も僕の友達の書いた、新らし

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文部省の仮名遣改定案について

芥川竜之介

文部省の仮名遣改定案について 芥川龍之介 我文部省の仮名遣改定案は既に山田孝雄氏の痛撃を加へたる所なり。(雑誌「明星」二月号参照)山田氏の痛撃たる、尋常一様の痛撃にあらず。その当に破るべきを破つて寸毫の遺憾を止めざるは殆どサムソンの指動いてペリシデのマツチ箱のつぶるるに似たり。この山田氏の痛撃の後に仮名遣改定案を罵らむと欲す、誰か又蒸気ポンプの至れる後、龍吐

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竜村平蔵氏の芸術

芥川竜之介

龍村平蔵氏の芸術 芥川龍之介 現代はせち辛い世の中である。このせち辛い世の中に、龍村平蔵さんの如く一本二千円も三千円もする女帯を織つてゐると云ふ事は或は時代の大勢に風馬牛だと云ふ非難を得るかも知れない。いや、中には斯る贅沢品の為に、生産能力の費される事を憤慨する向きもありさうである。 が、その女帯が単なる女帯に止まらなかつたら――工芸品よりも寧ろ芸術品として

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結婚難並びに恋愛難

芥川竜之介

結婚難並びに恋愛難 芥川龍之介 あなたがたはゼライイドの話を知つてゐますか? ゼライイドは美しい王女です。何でも文献に徴すれば、足は蝋石の如く、腿は象牙の如く、臍は真珠貝の孕める真珠の如く、腹は雪花石膏の甕の如く、乳房は百合の花束の如く、頸は白鳩の如く、髪は香草の如く、目は宮殿の池の如く、鼻は城門の櫓の如くだつたと言ふのですから、万人に一人もない美人だつたの

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ピアノ

芥川竜之介

ピアノ 芥川龍之介 或雨のふる秋の日、わたしは或人を訪ねる為に横浜の山手を歩いて行つた。この辺の荒廃は震災当時と殆ど変つてゐなかつた。若し少しでも変つてゐるとすれば、それは一面にスレヱトの屋根や煉瓦の壁の落ち重なつた中に藜の伸びてゐるだけだつた。現に或家の崩れた跡には蓋をあけた弓なりのピアノさへ、半ば壁にひしがれたまゝ、つややかに鍵盤を濡らしてゐた。のみなら

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霜夜

芥川竜之介

霜夜 芥川龍之介 霜夜の記憶の一つ。 いつものやうに机に向つてゐると、いつか十二時を打つ音がする。十二時には必ず寝ることにしてゐる。今夜もまづ本を閉ぢ、それからあした坐り次第、直に仕事にかかれるやうに机の上を片づける。片づけると云つても大したことはない。原稿用紙と入用の書物とを一まとめに重ねるばかりである。最後に火鉢の火の始末をする。はんねらの瓶に鉄瓶の湯を

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