Chapter 1 of 69
奪はれた魂
地軸に近い何所かで
うづもれた
世にも稀なる紫ダイヤを
とげ/\と骨ばかりのやせこけた
悪魔たちがまるくとりまき
ひからびた手を繋ぎ合ひ
にやにやとした
もの倦い足どりで
踊るたびにからからと音がする
◇
ちやうどそれのやうに
ちやうどそれのやうに
かつて失はれた俺の魂は
かつてうばはれた俺の魂は
柔かく
滑らかな琥珀の頬と
熟したザクロの唇とをもつた
美しい悪魔が
青くはげしく燃える俺の魂を
しなやかな白いくすり指で
さんざん何処かで
弄んでゐることであらう
◇
しかし美しいサタンよ
お前が何時か濃緑の絨氈の上に
そつと置きわすれていつた
青銅の壺にはいつた
魂の小さいカケラを
俺はしつかりと握つてゐる
◇
お前はその魂のかけらを
俺からうばひ返さうとして
夜な夜な灰色の夢に忍び
いまさら傷ついた俺の魂を返し
柔らかいキスで
俺を釣らうとするのだが
お前の魂のかけらが
狂はしく手に燃焼するまでも
俺はいつかな返へしはせぬ
◇
俺は! 俺は俺は
煖炉の焔に熱した呪詛の烙印を
お前の額の白い肉に押しあて
ぢりぢりと焼けたゞれる匂ひと
おくれ毛の燃える匂ひを
存分に吸はしてくれるまでは
お前の
魂のかけらは永遠に返しはしない
一九二三、一、一二