Chapter 1 of 7

岸辺

冬の日がかんかん照つていた

川岸の枯草の中から首だけ出して

八十九歳の老人が釣をしていた

釣竿をもつたまま

水に映るちぎれ雲の間をおよぐ

冬の魚たちと昔話をしながら

老人は死んでいた

ちかちかと

日はかたむいていた

一匹の紋白蝶が

よたよたと向う岸に渡つていつた

魚たちが老人を呼んでいた

赤い小さなうきが

かすかな波紋をおこして

沈んだり浮いたりしている

Chapter 1 of 7