蔵原伸二郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
冬の日がかんかん照つていた 川岸の枯草の中から首だけ出して 八十九歳の老人が釣をしていた 釣竿をもつたまま 水に映るちぎれ雲の間をおよぐ 冬の魚たちと昔話をしながら 老人は死んでいた ちかちかと 日はかたむいていた 一匹の紋白蝶が よたよたと向う岸に渡つていつた 魚たちが老人を呼んでいた 赤い小さなうきが かすかな波紋をおこして 沈んだり浮いたりしている
蔵原伸二郎
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