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あたまでっかち
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あたまでっかち
下村千秋
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翻訳 Pagera AI
原文 Public Domain
Chapter 9 of 14

九

そのうちに夏休みがきました。しろ公は、つれてきたときより三倍も大きくなり、夜はよく家の番をし、昼間は林太郎のいうことをよく聞いて、いっしょにふざけながら遊んでもおしっこをもらしたり、手や足をひどくかむようなことはしなくなりました。

それに、しろ公はひじょうにりこうで、林太郎が夕方などさびしそうにしていたりすると、ぴったりと林太郎のそばにすりついて、はなれませんでした。それはまったく林太郎のきょうだいのようでした。

それで林太郎もいつか、このしろ公といっしょなら、ひとりではできないこともできるような気がしてきました。そして林太郎は、ある日、ひとりではできないことを、しろ公といっしょにりっぱにしてしまいました。それは、しろ公を、例の「さっぱ船」にのせ、自分が船をこいで、とうとうおっかさんのお里まで、入江を渡ってしまったのです。

お里のおばあさんもそれにはびっくりして、

「まあ、林太郎は、ほんとうにひとりで船をこいできたのかい。」

と、なんべんも聞きました。

林太郎は、さすがに少し顔色も変わっていましたが、元気よく、

「おれ、ひとりじゃないよ。しろ公とふたりだよ。」と答えて、「おっかさんをむかいにきたんだよ。おっかさんはどこにいるの?」と、聞きました。

おばあさんは、これは困ったことになったぞ、という顔をしていましたが、

「おっかさんはな、まだからだがよくならないので、土浦の病院へいってるのだよ。よくなって退院したら、じき林太郎のとこへかえしてやるから、きょうはがまんして帰っておくれ。」

と、やさしくいいきかせました。

林太郎は、くちびるをくいしばって聞いていましたが、

「うん。」

と、ひとこと答えたきりでした。

さてその日、林太郎はしろ公をつれて、土浦の病院までおっかさんをたずねていこうと決心しました。土浦までは霞ガ浦のふちをぐるりと回って、五里ちかくあります。おとなは自転車で一日に往復しましたが、やっと十一才の林太郎が、それも小さな足でぽつぽつ歩いて、まだ一度も歩いたことのない道をいこうというのですから、それはずいぶんの冒険でした。が、林太郎はおっかさんに会いたい一心から、もうあぶないことも恐いことも忘れてしまったのでした。

Chapter 9 of 14
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