Chapter 1 of 1

Chapter 1

東の磯の離れ岩、

その褐色の岩の背に、

今日もとまつたケエツブロウよ、

何故にお前はそのやうに

かなしい声してお泣きやる。

お前のつれは何処へ去た

お前の寝床はどこにある――

もう日が暮れるよ――御覧、

あの――あの沖のうすもやを、

何時までお前は其処にゐる。

岩と岩との間の瀬戸の、

あの渦をまく恐ろしい、

その海の面をケエツブロウよ、

いつまでお前はながめてる

あれ――あのたよりなげな泣き声――

海の声まであのやうに

はやくかへれとしかつてゐるに

何時まで其処にゐやる気か

何がかなしいケエツブロウよ、

もう日が暮れる――あれ波が――

私の可愛いゝケエツブロウよ、

お前が去らぬで私もゆかぬ

お前の心は私の心

私も矢張り泣いてゐる、

お前と一しよに此処にゐる。

ねえケエツブロウやいつその事に

死んでおしまひ!その岩の上で――

お前が死ねば私も死ぬよ

どうせ死ぬならケエツブロウよ

かなしお前とあの渦巻へ――

――東の磯の渚にて、一〇、三、――

*ケエツブロウ=海鳥の名。(方言ならん)

[『青鞜』第二巻第一一号・一九一二年一一月号]

●図書カード

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