Chapter 5 of 33
淡月梨花の歌
こはこれわが未だをとめなりし頃のうつし繪なり。さらば、げに君にこそはおくらめ。をかしき姿をな笑ひそ。ゆめ、人にな示しそ。心せよ、わが片身なるものを。かく言ひて、人のひそかにわれに與へたるひとひらの紙の上には、手に團扇もちて立てる舞姫姿の君ありき。ながめ入りつつ、さてわが言ひ出でし言葉は癡にして歌に似たりき。
かなしく白くうつくしく
わが心こそそぞろなれ。
あはでむなしく過ぎにける
汝がむかしこそ憾なれ。
夕月あはき梨花にして
汝が立てるこそ切なけれ。
ああかかる日に君をみて
かたりし人ぞ嫉ましき。