Chapter 1
おふくろよおれは おまえまでそう かわっていようとは おもわなかったまえば が 一ぽんしか のこっていなかったというのではないあたま が まっしろになっていたからというのでもないまた こし が ひんまがっていたからというのでも むろん ないおふくろよおれは あのばんおまえが もりあげて だしてくれる むぎめしのしみて ざくろのみのように ポツポツするやつをやぶれしょうじ の なかにはった ねまきのまえで かきこみながらおまえから きいたあの いえをこわされるときのはなし――ドンドンと かべをたたく きづちのおとがむないた を たたかれるように いたかったことそのために おまえが びょうきしたことだが びょうきがなおってから そうぎがはじまるとおまえまで えんだんに はいのぼったことそのとき しんけいつうで ねていた おやじまでが「ばあさん しっかりたのむぞ!」と はげましたということ…………そんな かずかずの ものがたりをきいているとおふくろよおれは ほんとに むぎめしが のどにつまったよほんとに よのなかはかわったな と おもったよおふくろよおれは おまえもよくしってるとおり 五ねんまえかんどう どうようの しうちをうけておまえたちや むらのやつから むらを おいだされた おとこだっただが おふくろよだが いまでは むらのやつも おまえたちもみんな このおれを したしくむかえてくれたのじゃなかったかかわったな おふくろよおれは どんなきもちがしたとおもう?おれは なみださえにじみでたぞそれはなんのためだ?みんな びんぼうのためじゃないかびんぼうは むらのやつらをも おまえたちをも みんなかしこくしたのだぞ…………
おれは しょうじにはった ねまきのまえで かぜをさけながらやしきのあとにできたという みごとな だが かべつちのにおいのする(もっとも はじめは しょうゆ の わるい せいかとおもったのだが)はっぱ の しおからいやつで ちゃづけを かきこみながらみかんばこ か なにかのなかに おさまっているせんぞ の いはい を みつめながらいよいよおれは おれのしょうがいの かくごをきめたのだむろん そのかくごではいたのだがそのとき ほんとに ハッキリと けっしんがついたのだもう おまえたちまで おれのみかただおれのしごとに みんなよろこんでいてくれるそうおもったのだおれは ちからがわいてきたおれは だから おおいそぎに そのばん かえってきてしまったのだ
おふくろよおれたちのしごとは いのちがけだだがおれたちは ただじゃ しねねえのだおまえたちも そちらでたのむぞおれたちは ちみどろだおたがいに いつやられるかしれねえがやッつけるか やッつけられるまで たたかうのだこどもさえ おれたちのうたをうたって もう うしろからおしてくるあとからあとから おれたちのなかまは めじろおしにつかえてるへこたらず くたばらずどうか がんばってくれふるしんぶんだが これは おれたち ろうどうしゃ ひゃくしょう の しんぶんだおくるから カナをひろって みんなでよんでくれよんですんだら やきすてたがいいふすま や しょうじ を はってはいけないぞいいか わかってるねくれになっても しょうがつがきてもさとうの一きんもたびのかたあしもおくれないのを ざんねんにおもうだが これがおれたちプロレタリアの ほんとうのすがただから しかたがないくれぐれも たっしゃでなでは またてがみをかこう
(『プロレタリア詩』一九三一年一月号に発表)
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