Chapter 1 of 1

Chapter 1

『幸福』よ、巷で出逢つた見知らぬ人よ、

お前の言葉は私に通じない!

冷たい冷たいこの顔が、私の求めてゐたものだらうか?

お前の顔は不思議な親みのないものに見える、

そんなにお前は廿年、遠国をうろついてたんだ、

お前はもはや私の『望』にさへ忘れてしまはれた!

よしやお前が私の許嫁であつたにしても、

あんまり遅く来た『幸福』を誰が信じるものか!

私は蒼ざめた貧しい少女の手に眠る、

少女よ、どんなにお前は軟かく、枕のやうに

夜毎痛む頭をさゝへてくれるだらう!

少女よ、お前の名前は何と云ふ?

もしか『嘆き』と云やせぬか?

そんなら行つて『幸福』に言つてくれ、

お前さんの来るのがあんまり遅いので

もはや私があの人のお嫁になりましたと!

●図書カード

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