
大倉燁子 · Japanese
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大倉燁子 · Japanese
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Original (Japanese)
小夜子は夫松波博士の出勤を見送って茶の間に戻ると、一通の封書を受取った。裏にはただ牛込区富久町とだけ書いてある。職業柄、こうした差出人の手紙は決して珍らしいことではないが、これは優しい女文字でしかも名前がない、彼女は好奇心にひかされて主人宛の親展書であるにかかわらず、開封した。 「旦那様!」という書き出しにまず眉を曇らせ、キッとなって読み始めた。 「あなた様は突然こういうことをお聞きになってもお信じになれないかも知れませんが、どうぞ、私の申上げるこの偽りのない物語を最後までお読み下すって、切なる私のお願いをおきき下さいませ。 今から九年前、お小間使として上っていた花と申す少女のあったことはいまでもお胸の底にハッキリとご記憶遊ばしていらっしゃるだろうと存じます。その花は旦那様のお気に召したばかりに、奥様の御機嫌を損じ、遂々お暇を出されてしまいました。 半年後、お家附きの奥様は玉のような若様をご安産遊ばしました。一日違いで、花もまた男児を産みました。同じ父君を持ちながら、一方は少壮弁護士として羽振りのよい松波男爵の御嫡男達也様、やがて立派なお家を御相続遊ばされる輝かしいお身柄。一方は生れな

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