
岸田国士 · Japanese
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岸田国士 · Japanese
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Original (Japanese)
今度の銓衡では、出席者のほとんど全部が、この「広場の孤独」を第一に推し、私もやゝ意を強くすることができた。といふのは、これまで屡々、私が特に推したものが選に漏れてゐるからである。 この作品は、既に識者の注目を浴び世評もおほかた定まつてゐると聞いた。芥川賞の出しおくれといふ観もあるが、それは決して作者の不名誉にはならぬと思ふから、遠慮に及ばぬであらう。 前作「歯車」から「漢奸」へと一歩進境をみせ、更に上海を舞台とするものから、今度の内地に材をとつた「広場の孤独」に至つて、作者の手腕は、もはや懸念の余地がなくなつた。 アメリカの特派員も中国記者も墺国貴族と自称する国際ゴロもなかなかよく書けてゐる。上海の異国的雰囲気は、これはちよつと誰にでも難物だが、現在の東京の植民地風景は、却つて作者の筆力にふさはしく、むしろ、作者に最も近いと思はれる人物の輪郭が浮き出て来ない憾みがあるだけである。それはどういふことかといふと、あまりに時間的な素材の中心にあつて、作者は自己の眼にうつるものを見逃さぬ努力をなすに急で、つい、自分の身近に立つ一人物の小説中における役割を軽く扱つてしまつたのではないかと思ふ。こ

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