薄田泣菫
薄田泣菫 · Japanese
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薄田泣菫 · Japanese
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Original (Japanese)
4・15東京日日(夕) 大阪のある大きな会社で、重役の一人が労働問題の参考資料にと思つて、その会社の使用人に言ひつけて、めい/\の家の生活向きを正直に書き出させたことがあつた。いゝ機会だ、ことによると、これが増給のきつかけとなるかもしれないと、職工達はてんでに自分の生活向きを正直に書き出した。正直にうちあければ、うちあけるほど惨めなのは彼れ等の生活だつた。 好奇心と満足と不安とのごつちやになつた気持ちで、職工達の報告書を調べてゐた重役は、その一つに家賃の項目が書加へてないものを発見した。その職工はすぐに重役室に呼び出された。 「なぜ、家賃の項目を書き落としたんだ。すぐ書き加へてもらひたい。」 「はい。」浅葱服の職工は飛んだ失敗でも見つけられたやうに恐縮した。「幾らか書き込んでおいた方がいいとは思ひましたが、正直にといふお話でございましたから、そのまゝ差出しましたやうな次第で……実は家は自分の持ち物なので、家賃と申しましては一文も払つて居りません。」 「家は自分のものだつて。」重役は自分の大きな鼻を他人の持ちものだと言つて、指でこつぴどく捩ぢ曲げられたやうにびつくりした。「それは偉いな、
薄田泣菫
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