薄田泣菫
薄田泣菫 · Japanese
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薄田泣菫 · Japanese
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Original (Japanese)
春菜 薄田泣菫 一 郷里にゐる弟のところから、粗末な竹籠の小荷物が、押潰されたやうになつたまま送りとどけられて来た。 その途端、鼻を刺すやうな激しい臭みが、籠の目を洩れて、そこらにぷんぷんと散ばつて往つた。それを嗅ぎつけると、私はほくそ笑みながら、すぐに自分の手で荷物の縄目を解きにかかつた。 包の中からは採りたてかと思はれるやうな、新鮮な韮の幾束かが転がり出してきた。私はその一つを手に取り上げた。 「春だなあ。韮の葉がもうこんなに伸びてる。」 私の郷里の備中地方では、よく韮を食べる。真夏になつてあの地方の小村を通りかかる人達は、そこらの農家の垣根だとか、菜園の片隅だとかいつたやうなところに、細かく群り咲いた白い花が、しなしなと風に揺られてゐるのを見かけるだらう。あれが韮なのだ。 海で漁猟するものの網に、鰆があがるころとなると、大地の温みに長い冬の眠から覚めたこの小さな蔬菜は、その扁べつたく、柔かな葉先で、重い畔土のかたまりを押し分けて、毎日のやうに寸を伸して来る。貧しい生活の農民たちが、鰆の白子でも買つて、それを汁の実にしようとする場合には、誰も彼もがいひ合せたやうに、なくてならないも
薄田泣菫
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