野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「これは低俗な義理人情や、歪められた忠義を鼓吹した時代には発表の出来なかった話で、長い間私の材料袋に秘められて居りましたが、今となっては最早憚り恐るる節もなく、この物語を発表したからと言って、私を不忠者不義者扱いにする、頭の固い便乗者も無くなってしまったことでしょう。私は思い切ってこの秘話を発表いたしますが、たった一つ、殿様の本当の名前だけは隠さして頂きたいと思います。旧藩関係がうるさい上に、この話に関係した人の子孫はまだ生きていて、盛んに活躍しているからであります」 作家の新庄佐太郎は、斯んな調子で始めました。奇談クラブの席上、会長の美しい吉井明子夫人、幹事の今八郎をはじめ、三十六人の会員達は、真珠色の光の中に、歌劇「サドコ」の海中の情景を見るように、静まり返って、怪奇な話に聴入って居ります。 作家新庄佐太郎は戦争中はわけのわからぬ筋からの圧迫で、殆んどお筆留めのような羽目に逢って来た男ですが、近頃はすっかり羽を延ばして、その構成力を存分に発揮し、彼独特の怪奇主義を真っ向に、諸方を苦笑させたり、面白がらせたり、兎にも角にも、当時の文壇には厄介な存在の一人でした。 「さて、前置は宜い加
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