野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
No translation yet. Request one to move it up the queue.
野村胡堂 · Japanese
First paragraph preview
Original (Japanese)
人間業では盜めさうもない物を盜んで、遲くとも三日以内には、元の持主に返すといふ不思議な盜賊が、江戸中を疾風の如く荒し廻りました。 「平次、御奉行朝倉石見守樣から嚴い御達しだ、――近頃府内を騷がす盜賊、盜んだ品を返せば罪はないやうなものではあるが、あまりと言へばお上の御威光を蔑しろにする仕打だ。明日とも言はず、からめ取つて來い――と仰しやる、何とか良い工夫はあるまいか」 南町奉行付、與力筆頭笹野新三郎、自分とは身分が違ひ乍ら、親身のやうに思つて居る捕物の名人錢形の平次に、斯う打ち明けて頼み込みました。 「へエ、――私も考へないぢや御座いません。盜んで直ぐ返すといふやり方が第一氣に入りません。戀の附文、貧の盜みと言ふ位で、食ふに困つての盜みなら、惡い乍らも可哀想とも思ひます。盜んだ品を翌る日返すのは、盜みを道樂にして居る人でなきア、私共を飜弄て居るに相違御座いません、何とかしてあの野郎をフン捕まへなきア、錢形の平次も世間へ顏向けがなりません」 平次は、日頃の穩厚な樣子にも似ず、ツイ拳固で膝を叩き乍ら、縁側の敷居際までにじり寄ります。 「お前がその氣なら、遠からず捉まへられるだらう――少しは
野村胡堂
Translation status
WaitingLog in to request a translation.
Other books by this author
Frequently asked questions
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
Free to read
Start reading immediately — no signup required. Create a free account for more books and features.