野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「親分、お願ひがあるんだが」 ガラツ八の八五郎は言ひ憎さうに、長い顎を撫でて居ります。 「又お小遣ひだらう、お安い御用みたいだが、たんとはねえよ」 錢形の平次はさう言ひ乍ら、立ち上がりました。 「親分、冗談ぢやない。又お靜さんの着物なんか剥いぢや殺生だ。――あわてちやいけねえ、今日は金が欲しくて來たんぢやありませんよ。金なら小判というものを、うんと持つて居ますぜ」 八五郎はこんな事を言ひ乍ら、泳ぐやうな手付きをしました。うつかり金の話をすると、お靜の髮の物までも曲げ兼ねない、錢形平次の氣性が、八五郎に取つては、嬉しいやうな悲しいやうな、まことに變てこなものだつたのです。 「馬鹿野郎、お前が膝つ小僧を隱してお辭儀をすると、何時もの事だから、又金の無心と早合點するぢやないか」 「へツ、勘辨しておくんなさい――今日は金ぢやねえ、ほんの少しばかり、智慧の方を貸して貰ひてえんで」 ガラツ八は掌の窪みで、額をピタリピタリと叩きます。 「何だ。智慧なら改まるに及ぶものか、小出しの口で間に合ふなら、うんと用意してあるよ」 「大きく出たね、親分」 「金ぢや大きな事が言へねえから、ホツとしたところさ。少し
野村胡堂
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