野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「親分、犬が女を殺すでしょうか」 淡雪の降った朝、八五郎のガラッ八は、ぼんやりした顔で、銭形平次のところへやって来ました。 「咬み殺されたのかい」 「そんな事なら不思議はないが、女が匕首で刺されて死んでいるのに、雪の中の足跡は犬なんだそうで――」 「そんな馬鹿なことがあるものか。犬が匕首を振り廻すなら、猫は出刃庖丁を持出すぜ」 「ね、誰だって一応はそう思うでしょう」 「一応も二応もあるものか。一体、どこでそんな騒ぎが持ち上がったんだ」 「行って見ましょうか、親分。犬が匕首を振り廻すような御時世じゃ、うっかり江戸の町は歩けねえ」 「よし、案内しろ。どこだ」 平次はもう身支度をしておりました。変った獲物に誘われる猟犬の本能のようなものを持っているのでしょう。型破りの事件があると、じっとしていられない平次だったのです。 「根岸で」 「三輪の万七兄哥の縄張じゃないか」 「へ、へッ、まア、そんなもので――」 「馬鹿野郎。俺をぺてんにかけておびき出す気だろう」 「とんでもない、親分。それほどの悪気があるものですか、――でも、こうでも言わなきゃ、親分が神輿をあげちゃ下さらないでしょう」 「…………」
野村胡堂
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