野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
江戸開府以来といわれた、捕物の名人銭形平次の手柄のうちには、こんな不思議な事件もあったのです。――これは世に謂う捕物ではないかも知れませんが、危険を孕むことにおいては、冷たい詭計に終始した捕物などの比ではないといえるでしょう。 「親分ッ」 飛込んで来たのは、ガラッ八の八五郎でした。 「何というあわてようだ。犬を蹴飛ばして、ドブ板を跳ね返して、格子をはずして、――相変らず大変が頓馬に乗って、関所破りでもしたというのかい」 平次は朝の陽ざしを避けて、冷たい板敷をなつかしむように、縁側に腹ん這いになったまま、丹精甲斐のありそうもない植木棚を眺めて、煙草の煙を輪に吹いておりました。 「落着いちゃいけねえ、いつもの大変とは大変が違うんだ、ね、親分、聞いておくんなさい」 「大層な意気込みだね、手前の顔を見ていると、――一向大変栄えもしないが、一体どんなドンガラガンを持って来やがったんだ」 平次はまだ庭から眼を移そうともしません。この姿態のまま、路地で犬を蹴飛ばしたことも、ドブ板をハネ返したことも、格子戸をはずしたことも気が付いていたのでしょう。 「親分、縄張内から謀叛人が出たらどうします」 八五郎
野村胡堂
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