野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「八、あの巡礼を跟けてみな」 平次は顎をしゃくって見せました。が、浅草橋の御見附を越して、浜町の方へトボトボと辿って行く男巡礼、頽然とした六十恰好の老爺に、何の不思議があろうとも、ガラッ八の八五郎には思えなかったのです。 「あの、拙い御詠歌をやって歩く――」 「そうだよ」 八五郎はそれ以上の問答を重ねませんでした。主人の命令を受けた猟犬のような素早さで、老巡礼の後をヒタヒタと跟けて行ったのです。 老巡礼は口の中で何やらブツブツ呟きながら、一軒一軒の戸口に立って、恐ろしく下手な御詠歌を歌って歩きましたが、どこでも相手にしてくれそうな様子はありません。 何軒目か――小意気なしもたやの前へ来ると、格子が開いて、盆の上へ小銭を捻ったのが一つ、四十恰好の女が差出しました。 老巡礼の御詠歌は、その報謝とは関係なく、しばらくは続きましたが、歌が終ると、 「――お染やぁい」 さまで、高くはありませんが、身に沁みるような悲痛な声が、老巡礼の唇を衝いて出たのです。 主人の女はしばらく躊躇いましたが、やがて思い切った様子で、 「お前さん、どうしたというんだい、お染さんとかを、尋ねてでもいなさるのかい」 老巡
野村胡堂
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