野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「お早よう」 ガラツ八の八五郎は、尋常な挨拶をして、愼み深く入つて來ると、お靜のくんで出した温い茶を、お藥湯のやうに押し戴いて、二た口三口啜り乍ら、上眼づかひに四邊を見廻すのでした。 「どうした八、大層御行儀が良いやうだが、何んか變つたことでもあつたのかい」 錢形平次は縁側に寢そべつたまゝ、冬の日向を樂んで居りましたが、ガラツ八の尤もらしい顏を見ると、惡戯つ氣がコミ上げて來る樣子で、頬杖を突いた顏を此方へねぢ向けました。 「何んでもありませんよ。ほんのちよいとしたことで」 「さうぢやあるまい、何んかお前思ひ込んで居るだらう。借金取に追つ駈けられるとか、義理が惡い昔馴染に取つちめられたとか」 「そんな事じやありません」 「だつて、急に起居振舞が少笠原流になつたり、膝つ小僧がハミ出してる癖に、日本一の鹿爪らしい顏をしたり、お前餘程あわてて居るんだらう」 「なアに、ほんのちよいとした事があつただけですよ」 「何んだそのちよいとした事てえのは? 氣になるぜ、八」 「實はね、親分」 「恐しく突き詰めた顏をするぢやないか。何んだい」 「笹屋のお松が三輪の親分に縛られたんですよ」 それは當時、兩國の
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