野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「親分、是非逢ひ度いといふ人があるんだが――」 初冬の日向を追ひ乍ら、退屈しのぎの粉煙草を燻して居る錢形平次の鼻の先に、ガラツ八の八五郎は、神妙らしく膝つ小僧を揃へるのでした。 「逢つてやりや宜いぢやねえか、遠慮することはあるめえ、――相手は新造か年増か、それとも婆さんか」 「あつしぢやありませんよ。錢形の親分に逢ひ度いんださうで、染井からわざ/\神田まで、馬に喰はせるほど握り飯を背負つて來ましたよ」 八五郎は自分の肩越しに、拇指で入口の方を指しました。 「堅い方だな、よく/\の事があつて遠方から來なすつたんだらう。洗足盥は洗濯物で一杯だ、すまねえが井戸端へ案内して、足を洗つたら此處へ通すが宜い」 平次がさう言ふのも待たず、 「恐れ入りますが親分さん、私は此處で御免を蒙ります――明るいうちに歸らないと、婆アが心配をいたしますので。へ、へ、へ」 妙な苦笑ひと一緒に、澁紙張にしたやうな五十恰好の老爺が一人、木戸を押し開けて、縁側の方へ顏を出しました。 「其處でも構はないが、陽が當つて少し眩しからう」 「へエ、天道樣に照らし付けられるのは、馴れて居りますので」 「成程、さう言へば狹い家の中よ
野村胡堂
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