野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「親分、お願ひ、一つ出かけて下さい。このまゝぢや、あつしの男が立たねえことになります」 相變らず調子外れな八五郎でした。飛び込んで來るといきなり、錢形平次の手でも取つて引立てさうにするのです。 「何を面喰つてゐるんだ。俺を拜んだところで、お前の男が立つわけぢやあるめえ、――まア落着いて話せ。金で濟むことか、腕を貸せといふのか、それとも」 平次は朝飯が濟んだばかり、秋の陽のさす六疊にとぐろを卷いて、のんびりと煙草の烟の行方を眺めて居たのです。 「そんな氣の利いた話ぢやありませんよ。今朝鎌倉河岸の三國屋で變死人があると聽いて驅けつけ、死骸を見ると紛れもない殺しだ。相手は大家だから十軒店の徳次郎親分や、町役人までも渡りをつけ、自害といふことにして葬ひの支度に取りかゝらうとするのを、あつしが一人で頑張つて、其儘にさせて來ましたがね。これが何んの曰くもなかつた日にや、あつしは髷節でも切るか、十手捕繩を返上しなきやなりませんよ。兎に角ちよいと覗いてやつて下さい」 八五郎は勢ひ込んで一氣に埒をあけようとするので、ツイ唾も飛べば、埃も立ちます。 「尤もお前の髷節は俺が見ても氣になつてならねえよ。自棄に
野村胡堂
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