野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「親分、小便組といふのを御存じですかえ」 八五郎は長んがい顎を撫でながら、錢形平次のところへノソリとやつて來ました。 いや、ノソリとやつて來て、火のない長火鉢の前に御輿を据ゑると、襟元から懷手を出して、例の長いのを撫で廻しながら、こんな途方もないことを言ふのです。 「俺は腹を立てるよ、八。まだ朝飯が濟んだばかりなんだ、いきなりそんな汚ねえ話なんかしやがつて」 平次は妻楊枝ををポイと捨てて、熱い番茶を一杯、やけにガブリとやります。 「てへツ、汚ねえどころか、それが滅法綺麗だからお話の種で」 「何をつまらねえ。容顏美麗だつて、垂れ流す隱し藝があつちや附き合ひたくねえよ。馬鹿々々しい」 平次がかう言ふのも無理のないことでした。貞操道徳が全く弛廢してしまつて、遊女崇拜が藝術の世界にまで浸潤して來た幕府時代には、男の働きで妾を蓄へることなどは寧ろ名譽で、國持大名などは、その低能臭い血統の保持のために、江戸屋敷の正妻の外に國許に妾を置き、それを見慣ふ有徳な武家、好色の大町人は申すまでもなく、甚しきに至つては學者僧侶に至るまで、公然妾を蓄へて聊かも恥ぢる色がなかつたのです。 この風潮に應ずるために、
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