野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「親分、變な野郎が來ましたぜ」 ガラツ八の八五郎、横つ飛びに路地を突つきつて、庭口から洗濯物をかきわけながら、バアと縁側へ顏を出しました。神田明神下の錢形平次の住居、秋の朝陽が長々と這ひ上がつて、簡素な調度を照らして居ります。 「何處へ何が來たんだ。相變らず騷々しいなお前は」 平次はとぐろをほぐして、面白さうなこの注進を迎へました。 「二本差が二人、肥つたのと、痩せたのが、角の酒屋で訊いて居ましたよ――高名なる錢形平次殿の御屋敷は、この邊ではないか――とね、お屋敷は嬉しいぢやありませんか」 ペロリと舌を出して、所謂平次殿のお屋敷中を一と眼に見渡す八五郎です。 お靜の手が屆くので、何處から何處まで嘗めたやうに綺麗ですが、座布團二枚、長火鉢が一つ、鐵瓶と茶道具と、そして、そして――、それつきりと言つた、簡素そのものの小市民生活です。 「お城と言はないのが見付けものさ、――いづれお家の重寶友切丸かなんか紛失して、易者の代りに俺のところへ來ると言つた寸法だらうよ」 そんな話をして居るところへ、 「頼まう」 などと、權柄らしい聲が聞えて來ました。 さて、女房のお靜に取次がせて、たつた一間きりの六
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