野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
江戸八百八丁が、たつた四半刻のうちに洗ひ流されるのではあるまいか――と思ふほどの大夕立でした。 「わツ、たまらねえ。何處かかう小鬢のあたりが焦げちやゐませんか、見て下さいよ」 一陣の腥さい風と一緒に、飛沫をあげて八五郎が飛び込んで來たのです。 「あツ、待ちなよ。そのなりで家の中へ入られちやたまらない――大丈夫、鬢の毛も顎の先も別條はねえ。雷鳴だつて見境があらアな、お前なんかに落ちてやるものか」 平次は乾いた手拭を持つて來て、ザツと八五郎の身體を拭かせ、お靜が待つて來た單衣と、手早く着換へをさせるのでした。 全く焦げつきさうな大雷鳴でした。さうしてゐるうちにも、縱横に街々を斷ち割る稻光り、後から後からと、雷鳴の波状攻撃は、あらゆる地上の物を粉々に打ち碎いて、大地の底に叩き込むやうな凄まじさでした。 「驚きましたよ。あつしはもうやられるものと思ひ込んで、四つん這ひになつて此處へ辿り着くのが精一杯――どうも腹の締りが變な氣持ですが、臍が何うかなりやしませんか知ら――」 「間拔けだからな、自分の臍を覗いて見る恰好なんてものは、色氣のある圖ぢやないぜ。第一お前の出臍なんか拔いたつて、使ひ物になら
野村胡堂
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