野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「親分、世の中にこの綺麗なものを見ると痛めつけたくなるというのは、一番悪い量見じゃありませんか、ね」 八五郎が入って来ると、いきなりお先煙草を五、六服、さて、感に堪えたように、こんなことを言い出すのです。 九月になってから急に涼しくなって、叔母が丹精して縫い直してくれた古袷も、薄寒く見えますが、当人は案外呑気で、膝小僧のハミ出すのも構わず、乗出し加減に一とかど哲学するのでした。 「――世の中――と来たぜ。お前のお談義も、だんだん劫を経て、近頃は少し怖くなったよ」 「でも、花を毟ったり、猫の子をいじめたり、金魚鉢を掻き回したりするのは憎いじゃありませんか。ましてこれが、人間の出来の良いので、眼のさめるような新造や年増となると、棘を刺しても痛々しいじゃありませんか」 八五郎は委細構わず、その幼稚な人道主義を説くのです。平次にからかわれて、鋭鋒を納めるような、そんなヤワな心臓の持主ではありません。 「何処の新造が棘を刺されたんだ――俺は又同じ棘を刺すんでも、年寄や子供の方が痛々しいと思うがな」 「妙に棘にこだわりましたね、――実は根津宮永町の棟梁で、石井依右衛門というのは親分も御存じでしょう
野村胡堂
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