野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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「いやもう、驚いたの驚かねえの」 八五郎がやつて來たのは、彼岸過ぎのある日の夕方、相變らず明神下の路地一パイに張り上げて、走りのニユースを響かせるのでした。 「何を騷ぐんだ、ドブ板の蔭から、でつかい蚯蚓でも這ひ出したといふのか」 平次は晝寢の枕にしてゐた、三世相大雜書を押し退けると、無精煙草の煙管を取上げます。 「そんな間拔けな大變ぢやありませんよ、いきなり頭の上から、綺麗な新造が降つて來たらどうします、親分は?」 「へエ、不思議な天氣だね、三世相にも今年は新造や年増が降るとは書いてなかつたが」 「兩國の輕業小屋ですよ、綱渡り太夫、此間から江戸中の人氣を沸ぎらせてゐたつばめ太夫といふ、若くて綺麗なのが蜀紅錦の肩衣で、いきなり天井から落ちて來て、あつしに噛り付いたとしたらどんなものです」 「怪我は無かつたのか」 「腰のあたりを打つて目を廻しましたがね、幸ひ命に別條は無いさうですが、その時は全く驚きました」 「まるで粂の仙人の逆を行つたやうなものだ。下で口をあいて眺めてゐる、八五郎の男つ振りに氣を取られて、思はず綱を踏み外したといふか」 「冗談ぢやない、綱が切れてゐたんですよ、三間以上も高
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