野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
「親分、良い陽氣ですね」 フラリとやつて來た八五郎は、襟の汗を拭いて、お先煙草を五六服、お茶をガブ呑みの、繼穗もないお世辭を言ふのでした。 「二三日見えなかつたが、何處へ行つて居たんだ」 錢形の平次も、この十日ばかりはまるつきり暇、植木の世話をしたり、物の本を讀み返したり蟻の行列を眺めたり、雲のたゝずまひを考へたり、まことに退屈な日を送つて居たのです。 「こんな時家の中に引籠つて居るのは、餘つ程錢のねえ奴か、女房に惚れてゐる野郎ばかりで」 こんな事をヌケヌケ言ふ八五郎を、平次はニヤリニヤリと受けました。 「當てられたやうだが、――それに引換へてお前は餘つ程景氣が良いと見えるな」 「何しろ、お天氣がよくて、身體が達者で、お小遣がふんだんにあるんだから、半日だつて叔母さんの二階に燻ぶつちや居られませんよ。外へ出たとたんに、江戸中の新造が、皆んなあつしに惚れて居るやうな氣がするでせう」 「江戸中の新造は大きいな、――ところで何處へ行つたんだ」 「神樂坂ですよ」 「妙なところへ行つたものだね、其處に良い新造でも居るのか」 「良い新造も居ますが、色つぽい年増も、浪人も、金持も居ましたよ」 「何ん
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